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アナリティクス界のドラッカーが提唱する
解析普及の7つのポイント

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2011/11/08 08:00

 2011年10月19日~21日に米国ニューヨークで開催されたデジタルマーケティングのイベント「eMetrics:Marketing Optimization Summit」。2日目午後の基調講演では、データドリブンな意思決定プロセスに関する研究とコンサルティングの先駆者、トーマス・H・ダベンポート氏が登壇し、『Everyday Analytics』と題した講演を行った。

 登壇したのは、International Institute for Analytics(IIA)の共同設立者、米バブソン大学教授のトーマス・H・ダベンポート氏。日本でも『分析力を駆使する企業』『分析力を武器とする企業』などの著書が出版されている。eMetrics主催のジム・スターンは、同氏を「アナリティクス界のドラッカー」として紹介した。

トーマス・H・ダベンポート氏
トーマス・H・ダベンポート氏

アナリティクスを普及させるための7つのポイント

 基調講演のタイトルは『Everyday Analytics』。“アナリティクスを日々の業務にうまく取り込み、成果を出せるようにするために何をすべきか?”がテーマだ。ダベンポート氏は「(米国では)この数年で、企業におけるアナリティクスの活用事例が増えてきたが、さらなる普及が必要。そのためには、次の7つが重要」と主張する。

  1. 職人技ではなくインダストリーにする
  2. 日常のサービスとして反復可能にする
  3. ツールを多様化させる
  4. 意思決定を支援する
  5. ビジネスユーザーにとっても簡単に使えるようにする
  6. プロセスを確立する
  7. 組織における関係性をInstitute化する

1. Industrialized:人に依存せず、インダストリーにする

 同氏は、個人に依存した「職人技」(Craft)と「産業」(Industry)の違いを次の8つの観点で説明した。

職人技と産業の違い
  職人技(Craft) 産業(Industry)
パターン化 プロジェクト毎の都度対応 業務の一部としてパターン化される
目的 一度のみ 継続的
メリット 一度のみ 継続する
投資 低い 高い
実装 比較的短い 長い
分析の速度 遅い(実装に時間がかかるため) 加速していく
スタッフ 労働集約的 自動化が進む
ノウハウ蓄積 記録される/失われる 維持し改善されていく

「これらは目安でしかないが、組織として徐々に右側の状態に移行していく必要がある」(ダベンポート氏)

2. Repeatable:反復可能にする

 アナリティクスを反復可能にするためには、アナリティクス担当やチームが提供するサービスをメニュー化することが重要になる。

 同氏は「A/Bテストやターゲティング、効果分析など、組織内でどのような支援を行うのかを明確にし、組織内で周知する必要がある。単なる宣伝ではなく、信頼されることが重要」と主張する。

 筆者もアナリティクスのチームを作ったことがあるが、「解析のことなら何でも相談してください」としか説明できていなかった。それでは何を期待したらよいかが分からないのだろう。実際に、依頼に対して「それはスコープ外です」と押し返したこともある。明確なサービスメニューを提示し、期待値を正しくコントロールすることが重要だと気づかされる言葉だ。

 例として、HP社のGlobal Analytics部門におけるサービスメニューが提示された。

 対象とする領域は、マーケティング、セールス、CR、SCM、財務、人事と多岐に渡る。それぞれの領域について、さらに細かく解析のサービス内容が定義されている。

 日本での「アクセス解析」(Web解析)は、このうちの「マーケティング効果測定」にフォーカスしがちだが、Webから得られるデータと各種データを統合することで他の分野にも広げていくことができる。また、他の分野における解析のノウハウをWebの解析でも応用ができる、ということだろう。

3. Divergent:ツールを多様化する

 アナリティクス、特にビジネスインテリジェンス(BI)のメインターゲットは一般ビジネスユーザーであり、いろいろなニーズに対応できる多機能で高価なスイート製品が多かった。ところが、専門性を持たない通常のビジネスユーザーが多機能すぎるツールを活用し、大量データを加工・集計して意思決定(アクション)につながる意味を見出すことは不可能に近いため、うまく機能しなかった。

 そこで、「ビジネスユーザーとプロのアナリストを明確に区別し、それぞれにふさわしいツールを提供する必要がある」とダベンポート氏は語る。

 ビジネスユーザーに必要なのは、単一の目的に特化したシンプルなアプリだ。一方、プロのアナリストにとっては、いろいろな実験が可能な環境(Sandbox)が必要になる。さらに、アナリティクスを業務プロセスに組み込んだり自動化する必要もあるが、「それを行うのはプロのアナリストであって、ビジネスユーザーではない」と同氏は主張した。

 確かに複雑なツールは一般ユーザーには難しすぎるが、シンプルすぎるツールだと専門性を持った解析担当にとっては物足りない。ここでいう単一目的のアプリとは、例えばマーケティング担当が担当施策の効果を把握するためのExcelアドオンや、経営者が日々の業績を確認するためのダッシュボード風のスマートフォン用アプリのことを意味している。あるいは、イントラネットでWebアプリとして提供するのが適切な場合もあるだろう。

 「誰が何を知ることで、意思決定につなげるのか?」を明確にすると、見せるべき情報やふさわしい提供形態が決まってくる。当たり前のような考え方だが、昨今のWebアナリティクスはこの点で、まだ発展の余地がありそうだ。

4. Usable:ツールを使いやすくする

 ビジネスユーザー向けのツールは、対象と目的を絞り込むだけでなく、使いやすくする必要がある。そのためには、特定の業界での特定の意思決定を支援するための分析アプリが効果的だ。セッション内では、次の5つの例が提示された。

特定業界の分析アプリ例
  • ヘルスケア業界における生産性を高めるアプリ
  • 製薬業界における販売員の採用支援アプリ
  • 小売におけるトラック積み込み分析アプリ
  • 銀行におけるモーゲージのポートフォリオ分析アプリ
  • 政府向けの収支予測と財務計画用アプリ
  • ソーシャルメディアにおける好感度(センチメント)の分析アプリ

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著者プロフィール

  • 清水 誠(シミズ マコト)

    Webアナリスト/改善リーダー。 1995~2004年まで凸版印刷・Scient・RazorfishにてWebコンサルティングやIA・UI設計に従事した後、事業会社側へ転身。UX/IAやデジタルマーケティングの導入による社内プロセス改善の推進と事例化を行っている。ウェブクルーでは開発・運用プロセスを改善し上場を支援、日本アムウェイでは印刷物のデジタルワークフローとCMS・...

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連載:eMetrics Marketing Optimization Summit, New York, 2011

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