SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第100号(2024年4月号)
特集「24社に聞く、経営構想におけるマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

【特集】「知らなかった」では済まされない、法規制とマーケティング

生成AI活用時の「法的なトラブル」を避けるために知っておくべき観点

 生成AIを安心して活用するためには、AIの抱える課題や問題点を理解し、社内ルールを設ける必要がある。一方で生成AIに関する法的な検討は、まだ発展途上であり、「これさえ守っておけば大丈夫」という一元化されたルールは存在しない。この状況で、AI活用をするために企業が最低限知っておくことは何か?個人情報、知的財産、ITに詳しく、生成AIを含むAI関係の法律問題にも注力する田中浩之弁護士にお話をうかがった。

AIに関して「ここだけ気をつけておけばOK」はない

――本日は生成AIと法規制の動き、また、それを踏まえて現段階で企業が気をつけるべきポイントをうかがえればと思います。現在、企業からはどのような相談が多いですか?

 相談が多いのは、生成AIにおける個人情報や営業秘密などの取り扱いです。プロンプトにどこまでの情報を入力して良いのかなどですね。また、生成にともなう著作権の問題も多いです。AIが作ったものは権利が発生するのか、生成AIを使った際の著作権侵害のリスクといった話ですね。さらに、生成AIに関する社内ルールをどう作れば良いかですとか、生成系AIを組み込んだ独自APIのサービスを提供している企業の場合は、利用規約に関するご相談も多いですね。

森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士・ニューヨーク州弁護士 田中 浩之氏
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士・ニューヨーク州弁護士
田中 浩之氏

第二東京弁護士会所属。慶應義塾大学大学院法学研究科特任教授(非常勤)。個人情報・知的財産・ITを3本柱とし、近時は生成AIに関する案件を多く手がける。著書:『ゼロからわかる生成AI法律入門』(共著、朝日新聞出版、2023年)、『ChatGPTの法律』(共著、中央経済社、2023年)等多数。

――判断基準として法律も関係してくるかと思うのですが、法規制は現在どうなっているのでしょうか?

 既存の法の枠組みを生成AIにあてはめたときの解釈について、ガイドラインなどで整理していくのが基本的な日本の方向性です。直ちに新しい法律を作って全面的に新しいルールでやっていきましょう、とはなりません。

 もちろん、議論の末に一部の法律の改正が必要だという結論に達する可能性は否定できません。しかし今現在は、個人情報保護法や著作権法などの各法律の枠組みの中で、「普通に考えるとこうだけど、それで良いんだっけ?」と議論し、精緻にしていく流れです。

 法律を解釈して対応しているため、まだわからない部分も多くあります。多くの場合、具体的な論点については、当局も論点やあり得る考え方の方向性等を整理しているところであり、このように考えればOKという画一的な考え方が示されているわけではありません。

――では、一般の企業は何を参考にして判断していけば、良いでしょうか?

 これ一つだけを見ておけば良いというものがある訳ではなく、色々なソースをみておくべきだと思います。

 たとえば内閣府のAI戦略会議の議事録が公開されています。また、個人情報保護委員会からは生成AIサービスの利用に関する注意喚起が出されています。さらに、知的財産に関しては、首相官邸のAI時代の知的財産権検討会の議事録や、文化庁の文化審議会著作権分科会の議事が公開されています。必ずしも、答えや結論が書いてあるわけではないのですが、何がポイントになり得るかや、どんな考え方の方向性があり得るのかを確認できるでしょう。

 各省庁の公開情報や弁護士や学者の書籍・論文を参考にして、あるいは弁護士に相談して、自社にとって一番合理的だと思う考え方に従って対応を決めていくことになります。各社の状況に応じて、対応を決めていくことになり、皆が同じ対応になるという訳ではありません。

生成AI×法律の書籍も複数出ている
生成AI×法律の書籍も複数出ている。田中弁護士が共著しているものとして、
画像左:ゼロからわかる 生成AI法律入門(朝日新聞出版)、画像右:ChatGPTの法律(中央経済社)

手探りで社内ルールを作っているのが現状

――専門家の意見も聞きつつ、各社手探りで対策をしているのが現状なのですね。現段階でAIを活用する際に、気をつけたほうが良いポイントはありますか?

 社内ルールを作る場合、ディープラーニング協会さんが「生成AIの利用ガイドライン」を公開しているので、参考になると思います。あくまで雛形なので、ガイドラインをそのまま使えば良いというわけではありません。使用しているAIのサービスやポリシーによって、書くことは変わってきます。自社の状況に合ったものにする必要があります、

 抽象的なルールならば比較的簡単に作れるでしょうし、保守的にしようとすればするほど、ある意味簡単です。たとえば、個人情報・機密情報は一切入れない、著作物を生成しないとすれば良いからです。それでもAIを活用できる余地はあるとは思いますが、使い道が限定されすぎてしまう。かといって、どの情報を使っていいか、どのような条件なら使っていいかと具体的にしていくほど複雑になります。どこまでルールで定めていくか、各社が試行錯誤しているところです。

この記事はプレミアム記事(有料)です。ご利用にはMarkeZineプレミアムのご契約が必要です。

有料記事が読み放題!初月1円キャンペーン中!

プレミアムサービス詳細はこちら

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラスをご契約の方は
・こちらから電子版(誌面)を閲覧できます。
・チームメンバーをユーザーとして登録することができます。
 ユーザー登録は管理者アカウントで手続きしてください。
 手続き方法の詳細はこちら

次のページ
AIを意識した契約が交わせているか?

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
【特集】「知らなかった」では済まされない、法規制とマーケティング連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2023/11/16 19:07 https://markezine.jp/article/detail/43855

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング