この連載は「マーケティング力」を鍛える体操です。前回のレッスン2では、格闘技を例に取り上げながら「バトル・ルール」で戦い方を定め、そしてトロと赤身の関係性を振り返りながら「バトル・フィールド」で戦う市場を規定することを考えました。この時に重要なことは、バトル・ルールは極めて企業本位で考える一方で、バトル・フィールドは消費者本位で考えることです。つまりポジショニングを捉える視点は二面性なのです。今回はこの「ポジショニング」についてさらに深くみていきましょう。
そもそも、“ポジショニング”って何だろう?
サッカーの試合をテレビ中継で見ていると、時折「このプレイヤーは、ポジショニングが上手いですね」という解説を耳にすることがあります。この「上手いポジショニング」とは、どういう意味でしょうか? そもそも、ポジショニングとは何を指しているのでしょうか?
辞書で調べると、ポジショニングは、
- 位置を定めること
- 適切な位置取り
などと説明されています。つまり「上手いポジショニング」とは、相手の攻守の態勢を的確に状況判断して、すぐに攻撃に転じることができたり、守りにも参加できたりする位置取りということになるのでしょう。サッカーはチーム・スポーツであり、競技場のスタンドから見れば、敵と味方は一対一の関係です。しかし、フィールド上に立つプレイヤーにしてみれば、ひとつのボールを奪い合う相手チームの11人のプレイヤーはすべて敵であることには変わりません。

確かに「攻撃(または守備)のスペシャリスト」と呼ばれるプレイヤーもいますが、“ポジショニング”という観点から言うならば、これら敵・味方含めて22人の陣形を瞬時に判断し、攻撃にも守備にも有利な位置取りができることが、上手い選手の条件のひとつであると思われます。これはマーケティングにおいても同様で、攻撃にも守備にも有利な位置取りをすることが非常に重要視されます。ですからマーケティングで語られる“ポジショニング”の考え方も、サッカーにおけるポジショニングの意味とそう違いはないと言えます。
攻撃と守備のバランス
そうなると、ここでまた新しい命題が発生します。ビジネスにおいて「攻撃にも守備にも有利な位置取り」とは何かということです。もう一度、サッカーに戻ってみましょう。サッカーにはいろいろな戦法があります。中盤を厚くして、華麗な個人技で観る方も魅了するサッカーを目指すスタイルもあれば、ゴール前にカギをかけたように鉄壁の守備陣形を敷いてカウンターを狙うスタイルもあります。それぞれのチームに戦い方の個性があることは衆目の一致するところです。
そんな中で、「2列目からの絶妙な飛び出し」とか、「サイドからの大胆なオーバーラップ」などというテレビ解説のフレーズとともに、攻撃のシーンに絡んでくるプレイヤーがいます。また、一方で「パスコースに割って入った」とか、「戻りが早いですね」などと守備のシーンで評価されるプレイヤーもいます。このどちらにも参加できる微妙なバランスを実現するプレイヤーこそが、攻撃にも守備にも有利な位置取りで、ゲームを左右しているポジショニングの上手いプレイヤーと言えるでしょう。
では、なぜ「上手い」という評価を勝ち得ているのでしょうか? それは、チームの戦い方のスタイルや自身のポジションと切り離せない関係にあります。すなわち、黄金の中盤を標榜するチームのミッド・フィルダーにおいては、中盤での華麗なパスワークや絶妙なスルーパスもさることながら、ある時には自身の積極的な攻撃参加や守勢の時の守備能力がプラスアルファとして求められるでしょう。フォワードやバックスについても似たようなことが言えます。ここで共通しているのは、そのポジションが本来必要とされる機能を全うしたうえで、さらにプラスアルファの攻撃的機能や守備的機能を実力として発揮できることが、ポジショニングの上手さの評価に繋がっているという事実です。
では、私たちのビジネスの世界に翻ってみましょう。
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東急エージェンシー 神通 靖彦(ジンヅウヤスヒコ)
理系出身のマーケティング・プランナーを目指し、総合広告会社(株)東急エージェンシー入社。マーケティング局、デジタルマーケティング局などを経て、現在、ナレッジセンター所属。
広告主と一緒にマーケティング、戦略、ブランド議論などを効果的に行う新しいカタチを開発・提供中。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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