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溢れる動画コンテンツの中でキラリと光るためにすべきこと、おんせん県の「シンフロ」PR戦略に迫る

発信したくなる「余白」をつくる

MZ:幅広い人に向けてコンテンツをつくり、WEBを中心に話題化させるというのは容易なことではないかと思います。どういった点に気をつけて、クリエイティブを制作したのでしょうか。

一ノ瀬氏:私はクリエイティブの企画には関わっておりませんので、クリエイティブスタッフに聞いた話ですが、「お風呂でシンクロ」という面白さとあわせて、大分県関係者の方々にも発信者になってもらうことをポイントにしたとのことです。大分県在住の方、出身の方、訪れた事のある方、そういったみなさんを刺激して、「この動画を誰かに伝えたい」と思っていただけることを狙っています。

 大分県はJRおおいたシティの開業や大分県立美術館の開館など話題が満載です。そのような部分も第二弾の動画「ご当地サウンド篇(Orchestration Of Oita)」では意識し、温泉だけでなく新しくなった大分を知っていただくようにています。全18市町村を回って録音した様々な音を組み合わせて、動画のBGM(大分出身の滝廉太郎作曲の「春」)を制作しました。この「シンフロプロジェクト」は大分が進める「新プロジェクト」とかけてあります。

 

 こうして一般の方々と街を巻き込むことで大分県の勢いや人の温かさが伝わるものになりました。さらに温泉名など県の情報を散りばめることで、視聴者はそこに自分の情報を乗せて発信したくなる「余白」を動画に持たせられたと考えています。

MZ:実際に、再生回数や情報拡散の成果はいかがでしたか?

一ノ瀬氏:公開から約2か月で動画は100万回以上再生されて、2015年12月段階では106万回再生。海外では、特に台湾でニュースに取り上げられたせいか、23万回以上再生されています。

MZ:多くのかたが視聴したのですね。PRの面ではいかがでしたか?

千田氏:PRの面では、WEBの拡散を目的に活動しました。作品としても完成度の高いシンフロ動画の「実力」をどう引き出すか、WEB拡散の起点を如何に作っていくかが最大の焦点でしたね。結果的にWEBのニュースでは300媒体以上に取り上げられ、TVでもキー局を中心に12番組ほどに取り上げられました。動画の公開当日から4~5日はずっとお祭り状態のような感じで、公開から2か月以上経った今も、番組の自治体動画まとめなどには必ずエントリーし、その中で大分県のシンフロが特にフィーチャーされるという新しい流れができています。

 ただ、今回の目的はPRでありがちな「露出獲得」ではなく、大分県の観光推進に寄与するようなブランドリフトの実現でした。動画をPRする場合、どうしても再生回数が定量的な評価としてついてまわるので分かりやすく“表に出ること”を目指したくなります。ですが、今回の最大の狙いは、この動画に接触した人たちの「大分県」に対する好意的な気持ちが強くなること、「大分県っていいよね」という“望ましい”広がり方をすることでした。情報をただ単にばらまくだけではコンテンツへの共感は生まれないので、「どんな人が、動画のどの部分を面白がって見るのか」を徹底的に考えて実践に移って行った感じですね。

 今回「あぁ上手く伝わったかもしれない」と実感できたのは、WEBニュースや動画をシェアする際に、自分自身のコメントと共に発信する方が多かったことです。多くのWEBメディアがシンフロの見どころを伝えてくれたことで、楽しんで動画を見てもらう雰囲気を作ることができた。定性的な効果ですが、動画本来の魅力に加えて、何か言葉を乗せてシェアしようという行動につながった要因だと考えています。

MZ:単純にシェアボタンを押してもらうだけでなく、自分の気持ちを書いてもらうところまで、行動を促すことができたのですね。

千田氏:その通りです。シンフロ動画には、わざわざコメント投稿までつけてシェアしてくださる方が約40%いました。これは同じ時期に100万再生を超えた他の動画に比べると、約3~4倍程度高い数値でした。PRによるブランドリフトはまさに調査段階ですが、動画市場は、今や500億以上という規模に発展しており、動画コンテンツは飽和状態です。情報の出し先を間違えると、どんなにクリエイティブが素晴らしくても、埋もれてしまうリスクがあります。この状況の中で動画を視聴してくれて、さらにそれを誰かに伝えたいと思ってもらうことは本当に難しい。ブランドリフトを目指すのであれば、コンテンツに共感させるポイントの見極めも重要かと思います。

奇をてらわず、素直に良さを伝える

MZ:動画の視聴者はどのような反応をされていますか?

一ノ瀬氏:ポジティブな評価が圧倒的に多かったです。投稿いただいたコメントには「シンフロ」とともに「大分県」「おんせん県」「すごい」という言葉が一緒に入っていました。大分県に「もっと地元に貢献したくなった」という声も寄せられました。さらに、大分出身の有名人がツイートをしてくださり、そこからファンの方に視聴していただくなど、想定していなかった層にも動画が広まったように感じます。

MZ:最終的には大分県の認知向上やブランドリフトが目的だと思うのですが、その面での成果はいかがでしたか?

一ノ瀬氏:ブランド調査では「大分の温泉は数が多い」という印象が向上する結果が出ていました。さらにある温泉施設によっては売り上げが伸長したケースもあり、一定の効果があったかと思います。

 数字も重要ですが、今回の動画は大分県にとっても、視聴者にとっても、「ポジティブシフト」であったことは大きいと考えています。「妹から勧められて見て、涙がでた」「久しぶりに大分に行ってみようかな」等のコメントがたくさんありました。なかには、全く大分県に関係ない方でも「この動画を見たら、霧が晴れたような気持ちになれる」と言ってくださった方も。全体的に好意的な声をいただきながら、きちんと動画が広まる嬉しい結果を得られました。

千田氏:それだけ、シンフロ動画には何か訴えるパワーがあるということだと思います。動画コンテンツによってはユーザーの議論を呼ぶために、あえて賛否両論のあるネタを仕掛けたり、「●●すぎる」系のいわゆる奇をてらったものもありますが、シンフロ動画の良さは、県の資産や魅力を素直に表現している点にあったと思います。

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「拡散はどこで火がつくのか」良い循環をイメージする

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター 出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/01/25 10:16 https://markezine.jp/article/detail/23643

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