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「長期的な利益」につながる売上を見極める。西口一希氏が説く「良い売上」の最大化と「悪い売上」の最小化

なぜウォルマートはKマートより、利益回収が早かったのか

 「良い売上、悪い売上」の概念をよく示している例として西口氏が挙げるのが、1980年代から2000年代にかけてのウォルマートとKマートのディスカウントストア業態競争だ。2003年ごろ、西口氏はP&Gのショッパーマーケティング視察の一環で、米ウォルマート本社を訪れた。そこで、ホワイトボードにKマートとの話を図解してもらったと語った。

 1980年ごろはKマートが売上高で圧勝していたものの、十数年の間にウォルマートが大きく成長し、2000年の時点ではKマートに5倍近くの差をつけていた。ウォルマートはその後も伸び続けたが、Kマートは2002年に経営破綻することとなった。

 両社とも生活者に身近なスーパーマーケットだったが、なぜこれほどの差が生まれてしまったのか。その要因は、ウォルマートが早くから実施していた「EDLP(Every Day Low Price)」戦略にある。日によって極端な値引きをせず、どの商品も常に一定の手ごろな価格で販売する戦略だ。

 一方でKマートは多大な販促費や付帯コストをかけ、華々しく特売商品を設けて集客していた。すると、Kマートは深く赤字になるため、利益回収するまでかなりの時間がかかる。

 「Kマートさんの新店には多くの顧客が来店し、売上は爆発的に上がりますが、利益の点では値引きの分だけ損失が大きくなります。一方ウォルマートさんは極端な値引きをしないので売上は上下しませんが、毎日変わらずお客さんが来店するので、利益も着実に上がります。そのため利益回収が早く、それだけ次の新規出店に投資できたのです」(西口氏)

当時のウォルマート本社の図解をもとに、西口氏が作成
当時のウォルマート本社の図解をもとに、西口氏が作成

Kマートが見逃していた「ブルウィップ効果」

 この利益回収のスピードの差が、出店競争の資金源、すなわちキャッシュフローに直結した。ウォルマートは利益回収が早く、1店舗ごとの出店でキャッシュを回収できたために、銀行から多くの資金を借りられた。しかしKマートはそのスピードを上げられず、企業全体の失速を招いてしまった。

 「当時、ウォルマートさんが『良い売上、悪い売上』の概念を明確に持っておられたかはわかりません。ですが感覚的に『値引きして来店する顧客は、値引きしない日は来店しない』ことをつかんでいたはずです。それが結果的に“継続的に来店する顧客”を育てるEDLPの強化になり、良い売上の積み上げにつながったのだと思います」(西口氏)

 そして、書籍にも含まない本講演で初出の話として、西口氏はKマートが見逃していた「ブルウィップ効果(Bullwhip Effect)」について言及。これは、末端のわずかな需要変動がサプライチェーン(小売りから卸、卸からメーカー)を巡って、ムチがしなるように増幅されていく現象だ。

 Kマートが極端な値引きをすると、在庫切れや過剰在庫、管理コストの増加を引き起こす。これは、やがて利益を圧迫し、顧客満足も低下する。

 「ウォルマートの継続性か、Kマートのイベント性か。この選択が、実は経営全体に大きな影響を与えます。ここまで可視化して分析する企業は決して多くありませんが、マーケティングや営業、販促に関わる方は、AIがデータ活用を爆速的に進める時代になる中、この領域に携わることが最も価値を生み出すと考えます」(西口氏)

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ビジネスが存続する条件は、継続顧客を増やすこと

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/01/14 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50201

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