対症療法ではなく、持続的に成長できる基盤を設計
MZ:ヤマハ発動機の課題を受け、電通デジタルとしてどのような戦略を立てましたか。
櫻井(電通デジタル):ヤマハ発動機さんには複数の事業部があるため、事業部ごとの課題に対して対症療法的に手を打つだけでは限界があると感じました。そこで、まずは皆さんとの対話を通じてゴールの定義を行いました。これにより、単に各事業部がパートナー企業と個別にやり取りしている状況を解消することが目的なのではなく、「各事業部が持続的にマーケティング活動を続け、高度化していくことが本来のゴール」であると整理できました。
ゴールが明らかになったことで、そのために必要な要素や戦略も明確化できます。今回は専門人材を送り込む支援だけではなく、電通デジタルが数多くのクライアント支援を通じて磨いてきた業務フローやフォーマットを、ヤマハ発動機さんやヤマハモーターソリューションさんの業務プロセスに当てはめる形が最適だと考えました。
また、最初から「100%の完全内製化」を目指すのではなく、「いつまでに、どこまで行くべきか」のロードマップを一緒に描いたことも重要なポイントです。ゴールへの道筋を共通認識として持てたことで、プロジェクト全体がスムーズに動き出したと思います。
課題を紐解きゴールへの道筋を具体化した、2つのステップ
MZ:実際の取り組みは、どのように進めていったのでしょうか。
櫻井(電通デジタル):大きく2つのステップで取り組みました。まず1つ目のステップとして、現在発生している業務を棚卸しし、どのような業務フローにするかを設計する“整流化”を進めました。
その上で2つ目のステップでは、電通デジタルが業務を持続的に回すために整備してきたフローやフォーマットのうち、ヤマハ発動機さん・ヤマハモーターソリューションさんに合わせてカスタマイズすべき要素を選定してドキュメント化する“標準化”に着手しました。特に、プロジェクトの開始前に「この日から全社統一の土台を活用します」という宣言を社内向けにも発出できたことで、スピーディな導入につながったと思います。
岩崎(電通デジタル):2つ目のステップは具体的に、運用の拠り所となる3種類のドキュメントを作りました。広告のプランニングをどう考えるかを整理した「プランニングガイドライン」、PDCAを回すための考え方や作法をまとめた「運用手引書」、そして環境変化にともなうルール改定の考え方を定めた「保守ルール」です。
加えて、入稿の指示書などフォーマット類も整備しました。とはいえ、あらゆる細則をルール化しすぎると現場は実情に合った動き方ができなくなってしまいます。そのため、最大公約数となるラインを見極めながら、“引き算”の感覚で定めていきました。
王(ヤマハ発動機):ドキュメントの草案ができた段階で、事業部の担当者にも実際に見せて「現場で使えるか」「知識がゼロでも運用できるか」をヒアリングし、複数回ブラッシュアップしました。このプロセスが、実際に機能するドキュメントに仕上げるための大きなポイントだったと感じます。
MZ:整流化・標準化の2ステップに追加で、BIツールも整備されたそうですね。
櫻井(電通デジタル):BIツールは、今回作成したドキュメントに即して数字を分解・可視化できる設計にしました。ヤマハ発動機さん、ヤマハモーターソリューションさん側の強力な連携もあり、プロジェクトの発足から合計5ヵ月程度というスピード感で、各種ドキュメントおよびBIツールを納品できました。

