同質化・単価高騰から脱却するには?予算配分の考え方も
杉原:ではここから本題に入りましょう。現場で共通して起きている課題として、まず「同質化」が挙げられます。AIによって同じ土俵に立てる一方、アウトプットまで似通ってしまうという問題です。加えて、広告を中心に「単価高騰」も進んでいます。藤原さんは、この2つが同時に進む状況からどう抜け出すべきとお考えですか?
藤原:同質化の原因はAIではなく、AIに渡す材料にあります。LLMは平均値を出すため、同じものを入れれば同じものが出てくるのは当然です。差別化には、1st Partyデータや独自リサーチの活用、判断軸を持ったプロンプト設計、そして最終判断を人間が握ることが不可欠です。マーケターの能力の差は「手を動かす速度」から「どう考えるか」に移っています。
経営層を対象に経営、マーケティング、デジタルで企業成長の角度を上げるサポートを行う会社である株式会社300Bridgeを経営。KOMEHYO HDでは全社マーケ・DXを統括し、EC事業をゼロから約100億円規模に育成させた。ユナイテッドアローズでは最高デジタル責任者として1300億円規模のデジタル改革やOMO推進を指揮し、その後PEファンドであるアドバンテッジパートナーズでは投資先企業のマーケティング、デジタルでバリューアップを担当。
そのためには仕事のやり方を変えるしかありません。AIを使う目的は突き詰めると「時間を作ること」です。8時間をAIで2時間に圧縮し、残りをあえて暇にするのです。冗談ではなく本気でそう思っています。判断軸は経験からしか生まれないからです。人と話す、物を買ってみる、体験してみるといった積み重ねがなければ、判断軸そのものが育たないのではないでしょうか。
杉原:あえて余白を作るほうが「どう考えるか」の判断軸が鍛えられ、チャンスをつかめるということですね。
小島さんには、検索を起点に複数媒体を運用するなかで、媒体間の予算配分をどう判断しているか。加えて、ラストクリックで見える直接コンバージョンと、認知・比較段階を経て来る間接コンバージョンのバランスをどう設計しているかについてうかがいたいです。
小島:予算配分は、まず事業計画からくだって考えていきます。事業計画上のマーケティングの役割が決まった後、ペイドかオウンドか、さらに媒体へという構造で整理しています。
ペイド予算は、短期ROIと中長期ROIをまず分けて考えます。短期はMMMや媒体単体・横断の効果測定を複合的に組み合わせて判断。中長期、特にアッパーファネルへの投資は、テレビCMやYouTube、OOH・O2O広告といった選択肢の配分も含め、事業全体としてフライホイールが回るよう戦略的に意思決定していきます。
ミクロな精緻さと全体俯瞰のバランスについては、どちらに偏りすぎてもいけないと感じており、その時々で視点をスイッチングしながらライトポイントを見出していく感覚です。
マーケターから経営層への説得方法と投資判断
杉原:続いてのテーマは、投資判断と経営層への説得、AIと人間の役割分担についてです。藤原さんには、ミドル~アッパーファネルなど、ROIだけでは語りにくい領域への投資を、経営層にどう説得してきたのでしょう。
藤原:マーケター用語を経営言語に置き換えることです。客数・単価・頻度への因数分解はベースとして必要ですが、その先が肝心です。PLで語るのではなく、見込み客のストックをBS的に解釈して「将来顧客になりそうな人がこれだけいる」と示す。経営層がよく見るBS・キャッシュフローの文脈に乗せると、「ああそうだね」と腹落ちしてもらいやすくなるでしょう。
また、市場占有率や投資の進捗など大きな絵と数字を組み合わせること、競合に取られるリスクをフィアストーリーとして語ることも有効です。チームには数字で細かく話し、経営には2〜3段階抽象度を上げて話すといった使い分けが求められます。
今はAIにプロンプトを渡せばスライドも作ってくれます。あとはどう語るかを考えるだけだと思います。
小島:AIで作ったとわかるプレゼンを経営層に出すのはアリなのでしょうか。
藤原:AIで作ったことを隠すからいけないのであって、「AIで出したらこうなりました、これを基にディスカッションしましょう」と伝えればいいのではないでしょうか。経営者の意思や独自の文脈はAIには入れられません。だからこそ、AIが出した平均値をたたき台にして、そこから一緒にブラッシュアップしていくのがよいです。

