「老化細胞」を減らす。4,000種の素材から導いたエビデンス
サプリメント市場は参入障壁が比較的低く、類似品が溢れるレッドオーシャンだ。その中でファンケルが確立した圧倒的な競争優位性(モート)は、自社のR&D(研究開発)から生み出された「世界初のエビデンス」にある。同社総合研究所 基盤技術研究センター次長 兼 機能探索第一グループ 課長の渡邉知倫氏によれば、老化の要因とされる14の項目のうち、彼らは分裂が停止し体内に蓄積する「老化細胞」に着目した。
老化細胞は、加齢に伴う活気や活力の低下、疲労感の原因となるだけでなく、周囲の正常な細胞の機能まで低下させてしまう性質を持つ。渡邉氏はこの現象を「腐ったみかんが周りのみかんを腐らせてしまうようなもの」とわかりやすく表現している。そして、同社はこの老化細胞に働きかける成分を探すため、社内にストックされた約4,000種類もの素材を5年の歳月をかけて検証した。その結果、江戸時代からお茶や天ぷらとして食されてきたバラ科の植物「キンミズヒキ」に含まれる「アグリモール類」に、老化細胞を減らす作用があることを世界で初めて突き止めたのだ。
渡邉氏は前職でアルツハイマー病の新薬創出に携わっていた経歴を持ち、医薬品開発の長い道のりではなく、日々の暮らしの中で感じる不調を未然に防ぐ「未病」フェーズでのアプローチを志してファンケルに参画したという。
同氏は研究の核心について、「実年齢が上がっていく加齢は誰にでも平等に訪れるものなのですが、生物学的な細胞の衰えである老化のスピードは人によって異なります。実年齢と細胞の年齢には『エイジギャップ』が存在するんです」と語る。この独自の視点と途方もないR&Dの蓄積こそが、他社には容易に模倣できない強固な事業基盤となっている。
発表会では順天堂大学大学院医学研究科教授の堀江重郎氏もビデオで登場し、ファンケルによる研究の社会実装について期待のコメントを寄せた。同氏は若返りをテーマとした世界最高峰の懸賞金レース「XPRIZE Healthspan」に日本チームとして参画している。このチームのサポートにファンケルが注力している事実も、その技術力の客観的な証明として機能している。
未来への投資へ。行動変容を促すストーリー
どんなに優れたエビデンスがあっても、それが顧客の行動変容に結びつかなければビジネスとしては成立しない。ファンケルのマーケティング戦略の秀逸さは、エイジングケアを「衰えへの不安対処」から「未来へのポジティブな投資」へと意味づけを変えた点にある。ファンケルで執行役員 マーケティング戦略統括オフィス 健康食品事業本部 本部長 兼 クロスブランド 部長の斎藤智子氏は、購入者の多くが日頃から将来の健康に対して投資を惜しまない意識の高い層であることを指摘している。
斎藤氏はこの市場の反響について、「従来、年齢対策というものは、不安への対処のために行われてきたものだと感じております。しかし、『ウェルエイジ プレミアム』は未来への投資という、もっとポジティブなアクションへと年齢対策の常識を変えつつあるのではないでしょうか」と分析する。事実、同製品はファンケルの主力商品の中でもリピート率No.1を獲得している。「これからが楽しみ」「自分に期待できるようになった」という顧客の声は、製品がもたらす情緒的価値がいかに高いかを示している。
さらに特筆すべきは、成分のブランディング戦略である。顧客調査において、同製品の機能成分であるキンミズヒキは、近年「若返り成分」として市場を席巻しているNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)などの話題の成分を上回る関心を集めたという。これは、「老化細胞を減らす」という最先端のサイエンスと、「古くから食されてきた植物由来」という安全性やストーリー性が見事に融合し、消費者の納得感を最大化させた結果と言えるだろう。
