事業成長につなげるKPI設計の考え方
では、SNSのKPIはどのように設計すればよいのでしょうか。まず押さえておきたいのは、SNSが売上アップにつながるまでのプロセスです。
SNS活用が売上につながるプロセスは、SNS上で商品の認知を広げ、興味を持ってもらうところから始まります。この認知獲得において、自社アカウントの運用だけでなく、ユーザーが自発的に投稿するクチコミ(UGC)が重要な役割を果たします。
この流れを、ホットリンクでは「ULSSAS(ウルサス)」として提唱しています。ULSSASはSNS時代の購買行動モデルで、従来のファネル型ではなく、フライホイール(弾み車)のようにぐるぐると自律的に回るサイクルが特徴です。
それぞれのアルファベットは以下のステップを表します。
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U:UGC
ユーザーがブランドや商品について自発的に投稿する -
L:Like
その投稿に「いいね」が集まり、プラットフォームのアルゴリズムによって、より多くの人の目に触れる -
S:Search1(SNS検索)
気になったユーザーがSNS上でブランドや商品を検索する -
S:Search2(Google/Yahoo!検索)
購入先を探すなど、指名検索で詳細を調べる -
A:Action(購買)
商品やサービスを購入する -
S:Spread(拡散)
購入体験をSNS上に投稿する。これが新たなUGCとなり、サイクルが再び回り始める
ULSSASの大きな特徴は、購買後の「拡散」が次のUGCの起点になる点です。良質なUGCが生まれてサイクルが回り始めると、多大な広告費を投下し続けなくても、クチコミと拡散が連鎖して自律的に認知が広がっていきます。
現在、生成AIが台頭し、商品やサービスの情報収集や比較検討にも使われるようになったことで、生活者が情報に触れる経路はより多様化しています。こうした環境変化を踏まえると、企業の自社発信だけでは生活者に情報が届きにくくなっており、生活者に自発的に語ってもらう状態を作る重要性はむしろ高まっています。情報に触れる経路が多様になっても、UGCを起点に認知・検索・購買・拡散の循環を生み出すというULSSASの本質は変わりません。
UGCが広がることでブランドへの関心が高まり、指名検索が増え、最終的に購買につながります。弊社の調査でも、UGC数と指名検索数が相関し、指名検索数と売上が相関することが確認されています。
「売上と連動する可能性が高い指標をKPIに置く」ことが、効果的なKPI設計の考え方です。UGCと指名検索、指名検索と売上は相関が確認されている指標であり、効果的なKPIの1つと言えるでしょう。
一方、「フォロワー数」や「エンゲージメント率」がKPIとして機能しにくい理由は、売上との相関関係・因果関係が確認できないからです。フォロワーが増えてもUGCが増えるとは限らず、エンゲージメント率が高くても指名検索が増えるとは限りません。
KPIの見直しを判断する「問い」
事業成果につながらない指標をKPIに据えたままだと、担当者はKPIを達成しているのに、経営側は「でも、売上は変わっていませんね」と感じて、すれ違いが起きやすくなります。だからこそ、KPIを設定する前に担当者と経営層で「事業成果につなげるためには、どのKPIが最適か」を議論しておくことが大切です。
「そのKPIを達成すれば、本当にKGIに近づくのか」という問いに答えられないようであれば、KPIを見直すことを検討しましょう。
また、KPIをいくつも設定するのではなく、絞り込むことが重要です。インプレッション数、エンゲージメント率、フォロワー数など、SNSには測定しやすい指標が多く、気づけば多くの指標を追っている……なんて状態にもなりがちです。
KPIが増えるほど現場の工数は分散し、何を改善すべきかが見えにくくなります。本当に重要な指標に絞り込み、それ以外はモニタリング指標として定期的に確認する程度にとどめるとよいでしょう。
そして、半年から1年単位の中長期で評価することが大切です。SNSを通じたブランドへの認知や信頼は時間をかけて積み上がるものであり、中長期でKPIが改善し続けているかを追うことが、SNS活用の事業貢献を正しく評価する基本的な考え方です。
