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カルビー「白黒ポテチ」ショック。資源制約時代の“ブランド体験”をどう再設計するか【江端氏解説・前編】

カルビーの白黒化は、消費社会全体の転換点になるのか

 カルビーの白黒化が大きな意味を持つのは、同社が単なる一ブランドではなく、ポテトチップス市場の王者だからだ。2026年3月期決算説明資料によれば、同社のポテトチップス市場シェアは66.8%、ポテト系スナック市場シェアは72.3%。カルビーは商品を売っているだけではなく、カテゴリーそのものの見え方を作っている存在である。

 そのカルビーが主要商品14品について、印刷インクの色数を2色に変更する。これは一時的な仕様変更にも見えるが、「そもそも商品パッケージは、どこまで色や情報を持つべきなのか」という問いを社会に投げかけているのではないか。

 インクの色数を減らせば資材調達や印刷工程の負荷を下げる効果はある。しかしエコパッケージが伝えるメッセージはそれだけではない。SDGs的な環境意識や、「資源を必要以上に使わない社会へ移行すべきではないか」という問題提起が含まれる。パッケージは商品の魅力を伝える広告媒体であると同時に、企業の姿勢を伝える社会的メディアにもなりつつある。

 この変化は消費者の意識にも影響を与える。BCGは2025年の調査で、環境に良い商品に対して約3割の消費者が10%の上乗せ料金を支払う意思があると報告している。一方で博報堂の「生活者のサステナブル購買行動調査2025」では、若年層でSDGs理解が進む一方、「社会・環境問題に取り組むことに疲れを感じる」といった停滞感も示されている。

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出典:ボストン コンサルティング グループ「約3割の消費者が環境に良い商品に対し10%の上乗せ料金を支払う意思があると回答」(クリックすると拡大します)

 企業は単に「環境にやさしい」と言えばよいわけではない。なぜそのパッケージ変更が必要なのか、どの資源をどれだけ減らすのか、消費者にはどのような便益や不便が生じるのか、ブランド体験をどう維持するのかを、より丁寧に説明する必要がある。マーケティングは、より複雑で誠実なコミュニケーションを求められるようになる。

「通常版」と「エコ版」が共存する時代の到来か

 カルビーの白黒化をきっかけに考えるべきは、すべての商品パッケージを一律に簡素化すべきかという話ではない。これからは「通常版」と「エコ版」が共存する時代になるのではないか

 店頭で目立ち、ブランド体験を豊かに伝える通常パッケージ。一方で、印刷やラベル、装飾を減らし、資源使用量を抑えるエコパッケージ。消費者は購買目的や利用シーンに応じて選ぶことになる。

 既に飲料ではその動きが始まっている。日本コカ・コーラは「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」をケース販売で展開し、ラベルを剥がす手間が省け、分別・リサイクルしやすくなると説明している。アサヒ飲料もケース販売でラベルレスを展開し、樹脂量を削減できるとしている。エコパッケージは単なる環境対策ではなく、消費者にとっての“楽さ”や“処分しやすさ”と結びついている。

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出典:日本コカ・コーラ「手間がかからない『い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス』4月から全国で発売開始」

 この発想を広げれば、店頭ではカラフルな通常版、ECや箱売り、定期購入、業務用、家庭内ストック向けには色数を減らしたエコ版やQRコード活用の簡易表示版、といった選択肢が考えられる。消費者は、外で持ち歩く商品には通常版、自宅で消費する商品にはエコ版、と使い分けるかもしれない

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パッケージ戦略は「場面×体験」を設計する時代に

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この記事の著者

江端 浩人(エバタ ヒロト)

iU大学教授、江端浩人事務所 代表、MAIDX LLC代表、AlMONDO事業顧問

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2026/05/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50809

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