異例のスピードで進む日本市場への展開
そして日本でも、この四半期のうちに配信が始まった。まず6月18日、Hakuhodo DY ONE・電通デジタル・サイバーエージェントの3社が国内ローンチパートナーとしてパイロット運用開始を発表。
そして4日後の6月22日には、日本国内のChatGPTで広告表示が始まっている。対象は無料プランとGoプランの18歳以上ユーザーで、Plus・Proなど上位プランには表示されない。米国から数ヵ月遅れではなく、ほぼ同じ四半期のうちに日本にも届いた点は、これまでの新広告プラットフォーム導入と比べて異例の速さと言っていい。
出稿側の動きも速い。表示が始まった直後では「配信は始まったが、日本の広告主が自分で出稿できるセルフサーブはまだ」という整理だった。
ところが、6月下旬には、事前登録していたアカウントに招待メールが届き、日本からAds
Managerの管理画面にアクセスして入稿できた、という報告が出始めている。なおOpenAIのヘルプセンター上では日本の広告主向け提供はまだ明記されておらず、公式に一般開放と言い切れる段階ではない。しかし、実務レベルでは「触れるアカウント」が生まれつつある、という過渡期にある。
実務的には、まず少額のパイロットを回すことから始めたい。その際の肝は2つある。1つは、自社の商品・サービスが必要になる瞬間に、ユーザーはChatGPTとどんな会話をしているか——その文脈の仮説(コンテキストヒント)を言葉にしておくこと。もう1つは、効果の判断を広告管理画面のレポートだけに頼らないこと。
ChatGPT広告で「何が効いたのか」を理解するには、コンテキストヒントを単なるキーワードの束として扱わないことが重要である。特定のヒントが直接発火したかを広告主が細かく確認できるとは限らず、個別の会話ログも取得できない。
だからこそ、コンテキストヒントは「比較検討」「価格・ROI」「導入方法」「課題解決」など、ユーザーの検討文脈ごとに広告グループを分けて設計すべきである。その単位でCTR、CVR、CPA、ROASを比較すれば、どの意図仮説が成果につながったかを推定できる。つまり重要なのは、媒体レポートを待つことではなく、最初から分析できる構造でキャンペーンを組むことである。
トピック2:Googleが検索を自ら壊しながら作り変えた
Q2は、Googleが自社の屋台骨である検索を、自分の手で組み替えにかかった四半期だった。
Googleから米国におけるAI Modeの利用実態レポートが発表された。
— 杉原剛@デジタル広告最新ニュースを毎日最速要約『プラットフォームの思考回路』 (@sugiharg) May 25, 2026
AI Mode 1周年の数字は、検索の定義そのものが書き換わったことを示している。ユーザーの情報探索方法は長く続いてきたキーワード検索時代からガラッと変わった。… pic.twitter.com/Ryof06YAQT
Googleは5月、開発者向け年次カンファレンス「Google I/O」で、AI Modeが月間10億ユーザーに達したと発表した。米国投入から約1年での到達で、検索という最大の入口が、会話型のインターフェースへと実際に動き始めていることを示す数字だ。
問題は、その入口のあり方が利用者の行動を変えてしまう点にある。AI Modeでは、セッションの9割以上が外部サイトへのクリックなしに完結しているという調査もある。これまで自社サイトに流れていた需要が、Googleの回答の中で完結してしまう、という構造変化だ。
Googleが「AI Modeに広告」展開、約束された純粋なAI体験は早くも崩壊
— 杉原剛@デジタル広告最新ニュースを毎日最速要約『プラットフォームの思考回路』 (@sugiharg) May 25, 2026
1. AI Modeに突如出現したミッドカンバセーション広告
a. 著者がコーヒーメーカーのレコメンドをAI Modeに依頼したところ、オーガニックな回答の途中にスポンサード商品が挿入された
b.…
そして同じ5月、Googleは「AI Modeに広告を載せない」という当初の建前を実質的に手放した。回答の途中に「スポンサー」枠が差し込まれる様子が観測され、Google Marketing Liveでは、AI Modeの回答の“中”に溶け込む新しい広告フォーマット(会話型ディスカバリー広告など)が正式に発表された。広告は回答の「隣」ではなく「中」に置かれる方向に進んでいる。
もう1つ見逃せないのが、運用そのものの作り替えだ。検索広告はキーワード指定から、AIが意図をくみ取って配信する方式へと軸足を移しつつある。また、広告管理画面の中ではGeminiベースの運用支援エージェント「Ask Ad Manager」のベータが始まった。広告を「買う作業」自体が、人がキーワードを並べる作業から、AIに意図を伝える作業へと変わり始めている。
マーケターにとっての示唆は重い。第一に、クリックを前提にした流入設計が崩れる以上、「回答の中に自社が登場するか」が新しい勝負どころになる。商品データや原稿が、AIが正確な回答を生成できるだけの具体性・構造を持っているかが問われる。第二に、運用の作法が変わる。キーワードの精緻な作り込みから、AIに渡すデータと意図設計へと、運用者のスキルの重心が移っていく。
