4ステップの設計で実現。マーケの実業務を起点にしたデータ構築
──設計の具体的な流れを教えてください。
中﨑:分析の基盤構築から分析AIエージェント開発のための設計は大きく4つのフェーズで進めました。「1、分析目的の明確化」「2、データ要件の定義」「3、個人情報を含まないセキュアな環境下でのデータマート構築」、そして「4、分析AIエージェントの作成・検証」です。その結果、はなさく生命様と話し合い、Gemini Enterprise appのGoogle Agent Development Kit(ADK)カスタムエージェントにて、分析AIエージェントを集中開発していくことを選択しました。
──設計の中でこだわったポイントはどこでしょうか?
櫻井:単にデータを分析できる環境を作るのではなく、マーケティング活動の出口、つまり「どんなアウトプットがあれば業務が変わるか」を起点に置いていました。「知りたいことは何か」「その結果を出すためにどんなデータを生成・管理すればよいのか」と、活用の出口から逆算したワークフローをはなさく生命様と共に検討したのです。
中﨑:もう一つ重要だったのが、はなさく生命様の社内で使われている言葉の意味を正確に反映させることでした。業界や社内特有の言葉の定義や、分析ロジックなどをチューニングしてAIに学習させる必要があったのです。
日下部:たとえば保険のWeb申し込みは、一般的なECサービスと比べて入力項目が多く、慣れたユーザーでも30分以上かかることがあります。そのため申し込み完了時点のデータだけを注視しても、マーケティング活動には活かせません。そこで「仮登録」という計測ポイントを設け、CVR計測に用いています。こうした社内特有の概念をAIを活用したデジタルマーケティング基盤に理解させることが重要でした。
櫻井:はなさく生命様で固有に使われている言葉の意味を正確に再現するためにはどんなデータが必要か、そしてそのデータをマーケティング活動にどう結びつけるか。「翻訳」や実装・実現のやり取りを密に行いました。
これまではなさく生命様の広告運用を支援していたチームやAI専門のチームなど、多様な専門領域を持つ電通デジタル内部のチームがワンストップで連携したことが、今回の迅速な実装を支えたと感じています。
「考える作業は手放さない」ハイブリッド型の内製化
──伴走支援では、電通デジタルの担当者が常駐するのではなく、「内製化」を選んだとのことですが、その理由は何でしょうか?
日下部:はなさく生命にはもともと、自分たちでデータとナレッジを積み上げ、意思決定のスピードを高める文化があります。外部に委ねてしまうと、考えるためのナレッジごと手放すことになります。
畝村:新しいツールの使い方は教えてもらいたいですが、「考える作業は自分たちでやる」という姿勢は崩したくなかった。その思想が今回のプロジェクトの根幹にありました。
櫻井:電通デジタルとしても「内製化はハイブリッド型で良い」と考えています。
はなさく生命様のご支援で最も大事にしたのは、現場が必要とした時に必要なアウトプットが出てくること。そのため人が常駐するよりも、AIのソリューションをワークフローに組み込んで業務プロセスそのものを強くするほうが、本質的な価値を高めることにつながると考えました。
それを前提とすれば、クライアントの社内にあるべき領域は、ブランド管理や会社として大切な判断軸を守ること、ファーストパーティーデータの活用、クリエイティブの運用など、即時に意思決定を実運用に反映させるためのコア領域です。一方で、大規模プラットフォーマーとの連携ソリューションや先進的なプロダクトの知見、最新マーケティングトレンドの共有などはそのプロフェッショナルを擁する外部パートナーが価値を提供できる領域となります。思想に応じた支援の型として今後とも上手く連携していきたいです。

