広告で「遊ぶ」。新たなブランド接点
興味深いのは、EAが成功事例として公開した数字である。
ホームセンター大手のLowe'sは、『EA SPORTS FC』『Madden NFL』『College Football』でブランドチャレンジを実施した。プレーヤーがチャレンジをクリアすると限定アイテムを受け取れるといった仕組みで、98万7,000試合以上がプレイされ、20万件以上のチャレンジ完了につながった。
Red Bullもまた、ブランド仕様のゲーム内ミッションや限定ユニフォーム、アンバサダーとのコラボレーションを展開し、プレーヤーが自発的に参加したくなる仕組みを設計した。その結果、施策期間中に1億2,800万試合がプレイされ、120万件を超えるゲーム内目標が達成された。
従来の広告であれば、評価指標はインプレッションやクリック率だった。しかしゲームでは、「何試合プレイされたか」「何人がチャレンジを達成したか」「どれだけブランド体験に参加したか」が新しい指標になる。広告を見るのではなく、広告で遊ぶ。この発想の転換は非常に大きい。

世界観に溶け込むリアリティが「没入時間」を伸ばす
広告業界では長らくリーチが重視されてきた。しかし現在、企業が奪い合っているのは視聴時間ではなく、没入時間である。
テレビCMは15秒。YouTube広告は数秒でスキップされる。Instagramでは数秒でスクロールされる。一方でゲームでは、プレーヤーは90分、あるいは数時間にわたり同じ空間へ没入する。しかも、自ら操作し、友人と協力し、競争しながら体験する。
ブランドがその空間に自然に存在すれば、広告への心理的抵抗は小さくなる。EAが広告をスタジアム看板や中継演出、スポンサーイベントに限定しているのも、この「リアリティ」を損なわないためである。
効果測定までも一元化。デジタル広告に近い運用
EAだけが特別なのではない。オンラインゲームの「Fortnite」ではナイキやBalenciaga、Marvelなどが独自イベントを開催してきた。ゲーミングプラットフォーム「Roblox」ではGucciやNike、Walmartなどが独自空間を制作し、ブランド体験を提供している。
これまでゲーム会社ごとに個別に実施されていた取り組みを、広告プラットフォームとして体系化したことがEAの新しさである。
さらにEAは独自の広告サーバーとSDKを開発し、広告配信やターゲティング、効果測定まで一元化した。広告の視認性や不正配信対策には、広告計測企業のIntegral Ad Science(IAS)の業界標準も採用している。
つまり広告主は、ゲームという新しい媒体でも、デジタル広告に近い形で成果を測定できるようになる。
