BtoBのSNS炎上対策:リアルと同じ「常識」と「誠実さ」
松本:BtoB領域では情報発信にともなう炎上を心配する人が多く、「SNS禁止令」を出す企業もあるほどです。枌谷さんは長年発信を続けながらも炎上とは無縁ですが、どのような点を意識されていますか?
枌谷:まず、差別的な発言や他者への配慮を欠く発言は当然論外です。ただ、日常の常識に照らせば、そもそも対面でそんなこと言わないですよね。
次に、企業の代表者など社会的な立場を持つ人物が、過度に優越感を誇示するような態度(マウント)をとると反発を招きやすくなります。これも、社員や外で出会う人に対して、そもそも立場を振りかざさないですよね。
ネット上を公共の場として認識し、常識的なコミュニケーションの規範を守っていれば、大半の炎上は回避できると考えています。SNS上で対面する相手が見えないからといって、何を言っても良いわけではありません。家族相手でも、思ったことを何でも口にするわけではないですよね。
松本:知名度やブランドの構築は一朝一夕で成し遂げられるものではありません。BtoBの文脈において、長期的な信頼を積み重ねながら個人および企業のブランドを育てるためには、具体的にどのような情報発信を意識すべきでしょうか?
枌谷:まず、インプレッションの多さやフォロワー数は本質的な目的ではないと考えています。悪目立ちすることで、ブランドが傷つく場合もあります。
私が発信において重視しているのは「誠実さ」です。大手企業の担当者がSNSやコンテンツを見たときに「関わるのは危なそうだ」「イベントに呼ぶのは怖い」「付き合うのは避けたい」と思われたくありません。
たとえば、断定的な表現は避けて自身の考察であることを明確にし、極論を振りかざさない姿勢を徹底しています。周囲からどう見られているかまで想像し、無理のない範囲で知名度を高めていけたらいいですね。
誠実さを貫こうとすると、面白みに欠けてしまいがちです。一方で、露出の機会を増やそうとすると、過激な方向へ傾斜しやすい。「誠実でありながらも人々の目を惹きつける表現」を見つけることが、クリエイティブの役割だと捉えています。
AI最適化より「人間ファースト」。心を動かす発信の重要性
松本:近年、文章を構造化し、生成AIが理解しやすい形に整えようという意見を、よく耳にします。ただ、AI向けに整えた文章が、人間にとって読みやすく、心を動かすものになるとは限りませんよね。AIに理解される設計と、読み手に信頼される伝え方は、どのように両立させればよいのでしょうか。
枌谷:私は、あくまで「人間ファースト」だと考えています。
今の技術は十分ではありませんが、基本的には人間に近付く方向へ進化していくと見ています。AIに合わせた対策で少し得をしても、いずれ効かなくなるかもしれません。
それよりも人間から「良いな」「役に立つ」と思ってもらうことを、優先したほうがよいでしょう。技術は、後からついてくるのではないでしょうか。外部評価のことを考えても、結局は人間の心を捉えなければ、あまり意味がありません。
ただし、現在の過渡期におけるAIが、人間と同じように理解できるわけではありません。AIにも読み取りやすい形に整える必要はあります。人間ファーストを大前提とした上で、人間にとってわかりやすく、かつAIにとっても認識しやすい程度に、構造化等の調整を行うことが有効だと考えています。
松本:「人間ファースト」とは、「この企業から買いたい」という購買意欲の喚起や「この企業であれば信頼できる」という情緒的な共感も含めて、読み手の心を動かすことを指すのだと解釈しています。
枌谷:BtoBマーケティングや営業活動全般において言えることですが、どれほど精緻な論理を組み立てて提案書を構築しても、最終的に担当者の心が動かなければ成約にはつながりにくいですよね。
テクノロジーが高度化するほど、人間的な感情や信頼といったアナログな要素の強みが際立つのではないでしょうか。
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松本 健太郎(マツモト ケンタロウ)
株式会社EVERRISE 執行役員CMO
龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で統計学・データサイエンスを“学び直し”。デジタルマーケティングや消費者インサイトの分析業務を中心に、さまざまな分析を担当する。noteで活躍しているオピニオンリーダーの知見をシェアする「日経COMEMO」メン...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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