訪日客向け高価格店舗はいつ「ボッタクリ」がバレるか?
すっかり日本円が弱くなってしまった昨今、多くの訪日客は日本の物価は驚くほど安いと知覚しています。そうなると、それに付け込んで、日本人客を捨て訪日客のみをターゲットにした上で、製品価格を高く設定するような小売店やサービス店が増えることは自然なことです。
ですが、日本人向けに低価格に設定している店舗はあるわけで、訪日客は旅行期間が長くなると、ボッタクリ価格の店を避け始めます。慶應義塾大学の北澤涼平先生とADKマーケティング・ソリューションズの加藤瑞樹氏による論文「訪日旅客の日本製品に対する内的参照価格の動態的変化― 出身地域差と製品差に着目した非線形階層ベイズモデリング ―(英語原文;和訳付録※PDFダウンロード)」は、こうして、訪日客が滞在日数の増加にともなって日本の現地価格を参照水準とする価格判断へと順応していく変化のプロセスを検討しました。
その結果、滞在日数が増えればそれだけ、日本の物価はこの程度なのかと慣れていくわけで、製品にもよりますが、おおむね母国の価格が日本より高い場合(下方修正)のほうが低い場合(上方修正)より、その更新速度が速いことを見出しました。
これは、母国と比べて「安い」と感じた旅行者が日本でボッタクリに遭うでしょうが、滞在日数が増えればすぐに、易々とは「安い」と感じなくなって店舗選択を慎重に行うということです。逆に、母国と比べて「高い」と感じた旅行者は日本で節約しようとし、その節約行動は滞在日数が増えても持続することが見出されました。
「瀬戸内のハワイ」「日本のハワイ」、どちらが広告キャッチフレーズとしてよいか?
明治大学の竹内亮介先生と2名の共著者による論文「メタファー広告による観光地イメージの形成― ⽇本国内居住者と⾒込み国外旅客 ―(英文原文;和訳付録※PDFダウンロード)」は、観光地が自らを別の有名観光地に喩える「メタファー広告」が観光地イメージの形成にどのような影響を与えるか検討しています。
たとえば竹内先生のご出身地にほど近い山口県の周防大島は、現に「瀬戸内のハワイ」と名乗っています。ですが、代わりに「日本のハワイ」と名乗ることも可能だったはずです。このように起点となる観光地が距離や知名度の異なる別の観光地と結びつけられたとき、日本居住者と中国からの訪日旅行者は各々、それをどのように受け止めるでしょうか。
竹内先生・他によると、日本居住者を対象とした実験では、喩えられる観光地の距離と守備範囲の組み合わせによって好ましいイメージが形成される一方、中国在住者では同様の効果は確認されませんでした。この結果は、メタファー広告の効果が視聴者の文化的背景や地理的知識に依存することを示し、観光地のプロモーション戦略において、国内向けと海外向けで表現を慎重に設計する必要性を示唆しています。
