“共犯者”となるコアユーザーの見極めが肝
事業貢献を果たすには、コミュニティ自体がアクティブな状態でなければ意味がない。立ち上げ期の熱量づくりについて、真野氏は「運営側だけが盛り上がり、顧客にとって不要な場になる内輪ノリは最も避けるべき」と強調。「エンゲージメントの高い10社にお声がけし、最初の仕掛けをともにつくっていった」と語る。

加えてSUPER STUDIOでは専任のコミュニティマネージャーを採用し、社内で最も熱量を持って推進できる担当者を配置したことが軌道に乗る分岐点となった。
濵岡氏は自社リソースが限られていたからこそ「ユーザーを巻き込む共創」に振り切ったと話す。
「1人目のカスタマーサクセスとして時間が限られていたため、ユーザーさんを盛大に頼りました。日々のやり取りで熱量の高かったユーザーさん8名をオフィスに招き『何が課題か』『どういう場なら参加したいか』を率直に聞きながら、コミュニティの型を一緒に作ったんです」(濵岡氏)
初期から“共犯者”をつくり、少人数でもイベントの開催頻度を高く保つことで、社内外に活動の実績を示し続けたという。
自走するコミュニティをつくる仕掛けと工夫
初期の熱狂を醸成した後、それをいかに維持し、ユーザー同士が自律的に交流する「自走状態」へ導くのか。セッションでは運用の型とコンテンツ設計についての議論が交わされた。
SUPER STUDIOでは次のようなステップに沿って、着実なコミュニティ運営を続けた。
発信頻度の高いユーザーとの個別接点を通じてコミュニティの活性化を図り、プロダクト理解を深めるためのワークショップや実践的な勉強会を実施。「このコミュニティにいれば新しい有益な情報が得られる」という体験を愚直に積み重ねていった。投稿やコメントなど、コミュニティ内での活動に応じてポイントを付与し、そのポイントを限定ノベルティと交換できる仕組みなど、ゲーミフィケーションの要素も自走状態の一助となっている。
一方のNotionでも、多忙なビジネスパーソンが集い続けるインセンティブを設計。具体的には次のような特典や体験を提供しているという。
- コミュニティ限定のコンテンツ・ワークスペースの提供
- リリース前の新機能への早期アクセス権
- 製品フィードバックを通じたプロダクト開発への直接的な関与
- 個人の発信や登壇を通じたパーソナルブランディング・自社PRの機会
- 1年間の功績を讃えるアワード表彰とトロフィーの贈呈
「ベンダーが使い方を教える以上に、同じ悩みを抱える他社の実践事例こそがユーザーさんに求められています。1年間の貢献を称える日本独自のアワード表彰なども実施し、感謝を伝えることで自発的な発信が加速しています」(濵岡氏)
コミュニティの投資対効果をどう証明するか。これは多くの担当者が頭を抱える問いだろう。「コミュニティに参加している企業と、そうでない企業でLTVにどのような差が出ているか」という問いに対し、両社はともに「LTVの厳密な計測はまだ道半ば」と回答。現段階で数値化を急ぐよりも、明確に生まれている定性的な成果を捉えることが重要だという。
「扱う商材が異なるコマース事業者様同士がコミュニティ内で意気投合し、相互にメルマガで商品を紹介し合ったり、共同キャンペーンを展開したりといった動きが自然発生しています。プラットフォームを提供する側として、こうした顧客同士のビジネスシナジーを生み出せていることは大きな強みであり、顧客満足度にも直結しています」(真野氏)
定量的なLTVの証明が発展途上である一方で、目に見えるビジネス機会のトラッキングは着実に進められている。たとえばSUPER STUDIOでは、コミュニティ上で新機能に関するコンテンツに反応した顧客がいればセールス担当者からアプローチするほか、掲示板に投稿された課題を自社ツールで解決できる場合は、ecforce compassの担当者が解決策を返信し、関心度合いに応じてセールス担当者へ連携する。
Notionではイベントの満足度や開催頻度、参加者数、事例の創出数、そして「コミュニティ経由で既存案件がどのような進捗を見せたか」を丁寧にトラッキングし、活動の有効性を測っている段階だという。
