ブランドは「意味のつながり=文脈」で形成される
まず提示されたのが、「ブランドの提供価値AIO」の考え方だ。大広は、顧客の本音を引き出す手法や、顧客起点で価値を見つけるターゲティング、顧客との関係を育てる手法など、いくつもの強みを持つ。しかし原田氏は、こうした特徴を“点の”情報として置いておくだけでは、AIに正しく理解させるには不十分だと考えている。
「特徴と特徴の間の関係性までAIに理解させることで、 AIの回答を変える可能性に繋がる基盤を整えていきます(AI回答の情報源の一つとして)」(大広・原田信宏氏)
この"意味のつながり"を設計する手法として紹介されたのが、「オントロジー」というアプローチだ。オントロジーの詳細は、大広とともにプロジェクトを推進するLaboro.AIの菅原耕平氏が解説した。菅原氏によれば、AIが情報を参照する方法には大きく二つがある。一つは、言葉や表現を数値化し、意味の近さを捉える「ベクトルRAG」。もう一つが、情報同士を線でつなぎ、関係性を構造化する「オントロジー」だ。

ベクトル検索では、言葉のニュアンスの近さはわかっても、ある情報がどう別の情報とつながっていくかという関係性や文脈、背景、時系列までは理解しにくい。しかしブランドとは、企業の歴史や背景に基づく“文脈”によって語られるものだ。だからこそ、その文脈をAIにも理解させるための情報の持ち方として、グラフ型の構造化=オントロジーが重要になる、と菅原氏は話す。
デモ:大広のHPを"AIの目"で見てみると?
菅原氏は、大広の公開情報をもとにオントロジーを生成したデモを披露した。中心に大広を示す黄色いノード(情報そのもの)が置かれ、そこから無数のノードが線(エッジ、情報同士の関係性)でつながっている。
デモの中で一つの発見があった。大広の企業理念を示す概念ノードが、大広本体とはつながっているものの、他のどのノードとも線を結んでいなかったのだ。菅原氏は、「企業理念が、大広のどんな取り組みや実績に結びついているのかが、AIからは理解・認識されていないことが見えてくる」と説明する。
なお、菅原氏によれば、実際のプロジェクトではノードの数が万単位に及ぶケースも珍しくなく、その規模になると人が目視で確認して課題を見つけ出すには限界がある。そのため、オントロジー自体をAIに読み込ませ、ブランドが本来伝えたい内容と照らし合わせながら、どこに課題があるかを分析させるのが、実務における本来の使い方だという。
ここまでの内容を踏まえ、原田氏は「ブランドの提供価値AIO」の運用を、診断(AIが何を語り、何がつながっていないかを見る)→ 意味設計(価値・根拠・因果をブランドの言葉で整える)→ 改善(情報と接点に実装し、もう一度AIで確かめる)というサイクルで紹介した。一度整えて終わりにするのではなく、学習を続ける運用として回していくことが重要である。


