南雲氏の「インサイト」の定義と捉え方
講演の後半パートでは、南雲氏独自のインサイト発掘方法に移った。南雲氏がまず示したのは、インサイトそのものの定義だ。
「インサイトとは、人の行動を動かす鍵です。本人もまだ気付いていない、隠れた欲求や本音だと捉えています」
また、インサイトを深掘る前に、ビジネスの目的と課題・動かしたい消費者を明確にすることが不可欠だという。前提となる目的や課題が変われば、動かすべきインサイトも、消費者が行動しない「バリア」も変わってくるからだ。
南雲氏は人の欲求を「表層」と「深層」に整理する。表層にあるのが、時代や状況によって表れ方が変わる「欲求の表れ」。その奥で、普遍的な「本能」に根ざしているのが深層のインサイトだ。そして、この2層の間に位置し、消費者の「選択を決める思い込み」となるのが先入観である。

さらに南雲氏は、先入観とニーズを明確に区別する。すでに顕在化している欠乏や不満である「ニーズ」とは異なり、先入観は消費者自身が何となく信じていることや思い込みであり、自社の武器にもバリアにもなり得る。この先入観をどう崩すか、あるいはどう活用するかが業績拡大には重要であり、インサイト発掘の入り口にもなる。
インサイトから「独自価値」を生み出すには?
インサイトを発掘するだけでは、業績は上がらない。南雲氏は「人間理解→価値創造→繁盛」という3段階を描き切ることの重要性を強調した。
価値創造の段階で必要になるのが、インサイトに自社ならではの差別化要素(POD=Point of Difference)と、業界ごとの「繁盛の法則」を掛け合わせる作業だ。外食であれば五感に訴えることが繁盛の法則になり得るというように、繁盛の法則は業界・自社によって異なる。

そうして生まれた価値を、実際の業績(繁盛)へとスケールさせる段階で「キードライバー」、すなわち数字を動かす要素が効いてくる。想起の強さやブランドイメージ、PODの認知度などがその代表例で、南雲氏はこのキードライバーも業種業界によって異なると説明する。
「外食であれば利用意向やブランド想起が強いキードライバーになりますが、コンビニであれば“お得”というパーセプションが大きなキードライバーになります。“コンビニでは他よりお得である”というパーセプションが取れることが、キードライバーとして大きいことがわかっています」
創り出した独自価値を実際に機能させるには、現場の実装力に加え、ここでも「納得感とワクワク感」の両輪で設計図を伝えていくことが欠かせない。
