トピック2:広告が「話し返す」。ブランドエージェント広告が同時多発
OpenAI、クリック先が「エージェント」になる広告を開発中
— 杉原剛@デジタル広告最新ニュースを毎日最速要約『プラットフォームの思考回路』 (@sugiharg) August 1, 2026
8月初めに私が取り上げた「クリック先がエージェントになる広告」は、わずか1ヵ月半で各社の正式発表になった。9月16日、GoogleとOpenAIが同じ日にブランドエージェント広告を発表したのだ。
- Google:YouTube広告の中にリテーラーのAIエージェント(Business Agent)を組み込むベータを米国で開始。Demand GenキャンペーンとMerchant Centerの商品フィードの連携が条件で、1日10ドルから出稿できる。
- OpenAI:ChatGPTで「Sponsored Agents」のテストを開始。広告をクリックすると、ユーザーはブランドのエージェントと別枠で会話できる。Wayfairが米国のパイロットに参加。
Amazonも9月末の自社イベント「unBoxed」で、チャットボット内の広告「Branded Conversations」と、ブランドがAIに話してほしい内容を指示する「Conversational Briefs」を発表した。MetaはWhatsAppやMessenger上の業務用AIを既に100万社超に提供しており、9月には個人向けAIエージェント「Muse」を投入している。
各社を分ける2つの軸
同じ「ブランドエージェント」でも、設計は大きく2つの軸で分かれる。
1つ目は「誰が話すか」だ。アテンションを売るプラットフォーム(Google、OpenAI、Meta)はブランドに声を貸す。一方、棚とレジを持つAmazonは、ブランドに指示は出させても、話すのはあくまで自社のAIだ。
Amazonが9月、MetaのMuseによる自社サイトでの買い物代行を遮断したのも、同じ判断の延長線上にある。売場と購買データは他社のエージェントに渡さない、という防衛線である。
2つ目は「何を知っているか」だ。OpenAIはSponsored Agentsとの会話を、ChatGPT本体の回答からも、ユーザーが元々していた会話からも切り離すと強調している。ユーザーの信頼を守るための境界線だが、広告主から見れば「エージェントは文脈ゼロから話し始める」という制約でもある。検討に時間のかかる商材ほど、この差は効いてくる。
商品フィードがAIエージェントの「台本」になる
実務で最も重いのは、商品フィードがそのままエージェントの台本になるという点だ。GoogleのYouTube版は追加設定なしでフィードから自動生成される。Googleは商品データフィードを管理するMerchant Centerに「会話型の属性」を多数追加しており、lululemonのテストでは、提供した情報がAI Modeの関連レコメンドの半数で使われたという。
日本の商品フィードは、ショッピング広告の入稿要件を満たす最低限の整備にとどまっていることが多い。エージェントが自動で生成される以上、フィードの質の差が、そのまま接客の質の差として表に出る。マーケターへの実務面でのヒントは次のとおりだ。
マーケターへの実務ヒント
- 商品フィード、FAQ、返品・保証などのポリシーページを「エージェントが読む台本」として見直す。
- 出稿前に、会話ログがどこまで自社に返ってくるか、課金がクリック・会話・販売のどれに付くかを確認する。課金単位によって、会話を引き延ばすインセンティブの向きが変わる。
- エージェントの誤回答の責任はブランド側が負う前提で、回答してよい範囲とエスカレーションの条件を決めておく。
トピック3:管理画面が「エージェント」になった。運用の主体が入れ替わる
Amazon Ads、広告基盤を「Amazon Ads Agent」に改称し3つのキャンペーンタイプに集約
— 杉原剛@デジタル広告最新ニュースを毎日最速要約『プラットフォームの思考回路』 (@sugiharg) September 29, 2026
unBoxedでAmazonは、従来の広告コンソールとAmazon DSPの操作画面を「Amazon Ads Agent」に置き換えると発表した。キャンペーンタイプはSponsored Ads、DVA+(ディスプレイ・動画・音声)、1つの予算をファネル全体に自動配分するFull-Funnel Campaignsの3つに集約され、DSPという名称も「DVA」に改められた。
自然言語で指示でき、米国の全広告主が使える。「エージェント」は機能名から、広告プラットフォームそのものの名前に格上げされた。
同じ動きは各社で同時に起きている。
- OpenAI:Ads Managerのプラグインで、ChatGPTの中からプロンプトだけでキャンペーンの作成・更新・分析ができるようにした。HubSpot、Shopifyと統合し、Shopifyのアプリではサーバー間のコンバージョン連携(CAPI)が自動で設定される。
- Meta:MuseにAIによる広告運用最適化を載せた中小企業向けの「Muse for Small Business」を発表した。
- Google:AIアシスタント「Ask Advisor」をGoogle広告とGoogleアナリティクス全体に広げた。AI Maxには検索から購入までの統合レポートが加わり、広告文の方向性を指示する「AI Brief」は日本語を含む7言語に対応。動的検索広告(DSA)は2027年に廃止される。
外部のAIから広告アカウントを操作する接続口も一気に増えた。XやSnapが広告主向けのMCPサーバー(AIエージェントが外部ツールを操作するための接続規格MCP- Model Context Protocolに対応したサーバー)を公開し、AmazonはMCPサーバーに自然言語でAMC(Amazon Marketing Cloud)の分析クエリを生成するツールを加えた。GoogleもGoogle広告APIの開発支援ツールをClaude Codeなどのコーディングエージェントに対応させている。
自動化の「デフォルト」に気をつける
ただし、運用が楽になるほど見えなくなるものもある。Amazonは8月、ショッピングエージェント内の広告に既存キャンペーンを既定で自動登録した。Googleも既存キャンペーンのAI Maxへの自動移行を進めており、9月末には「デフォルトを変えるなら先に聞いてほしい」という広告主の批判が表面化した。Amazonが新たに打ち出した「新規顧客」や「長期売上」といった指標も、Amazon自身が定義し算出するものだ。
一方で、Googleは9月、AI Mode(AIモード)に完全一致・フレーズ一致のテキスト広告を配信するテストを始めた。
Google広告、AIモードでの完全一致・フレーズ一致の配信テストを開始
— 杉原剛@デジタル広告最新ニュースを毎日最速要約『プラットフォームの思考回路』 (@sugiharg) September 4, 2026
これまでAI Modeに出稿できたのは、AI MaxやP-MAXなどの自動化商材だけだった。そのため今回の動きは、「AI Modeに出したければ運用の主導権を手放せ」という条件を一部撤回した形だ。背景には、AI Modeの利用が増えるほど従来の検索在庫が減り、自動化商材の利用者だけでは需要を埋めきれないという事情があるとみられる。
同時に、対象は「明示的で直接的なインテント」に限られる。Googleは、キーワードで買える顕在インテントと、会話の中でAIが生成する、自動化商材でしか買えないインテントの2層に、AI Modeの広告在庫を切り分け始めたといえる。
マーケターへの実務面でのヒントは次のとおりだ。
マーケターへの実務ヒント
- 自動適用・自動移行の設定を棚卸しし、何が「既定でオン」になっているかを定期的に確認する。
- プラットフォームが定義する指標(新規顧客、長期売上など)を、自社のMMMやリフト調査で検証する体制を用意する。
- Amazon DSPとスポンサー広告を別々に運用している場合は、統合された場合の予算配分ルールを先に決めておく。
- 検索語句レポートとコンバージョン経路の変化を観測し、AI Mode経由の流入が既存キャンペーンにどう混ざるかを把握しておく。
