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MarkeZine Day 2026 Autumn

実店舗の価値はどう変わる?パルコ・ヤッホー・アイスタイルが語る次世代OMOと体験価値の創出

安原 直登(編集部)[著] / 関口 達朗[写]

顧客の熱量を生むファンイベントがもたらす波及効果

 実店舗を持たないメーカーの立場から独自のフィジカル体験を構築し、注目を集めているのがクラフトビールメーカーのヤッホーブルーイングだ。同社は「クラフトビール好きな仲間を作る」という理念のもと、CRM(顧客関係管理)の一環として熱量の高いファンイベントを積極的に開催している。

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 同社ファンイベントユニットディレクターの原謙太郎氏によれば、ファンイベントは他のマーケティング施策と比較して顧客の「熱伝導率」が極めて高く、ブランドに対する好意を急上昇させるための強力な手段として機能しているという。

 藤原氏が「ファンイベントの目的は通常、ファンのLTVを高くすることのみに見える」としたうえで改めて尋ねたのは、ヤッホーブルーイングにおけるビジネス全体とファンイベントとの関連性だ。原氏はLTV向上以外の重要な目的として2つを示した。

 第一に、参加者によるSNSやWeb上での自発的な情報発信、すなわちパブリシティ効果だ。象徴的な熱狂空間を作ることで、イベントに参加できなかった層へもブランドの熱量が自然と伝播していく仕組みが構築されている。第二に、見逃せないのがインナー効果(従業員への好影響)である。卸売業者や小売店を介したBtoB(企業間取引)が中心となるビールメーカーにとって、最終消費者と直接触れ合う機会は貴重だ。スタッフが直接顧客の生の声を聞くことで、次の製品開発に反映させたり、社内のモチベーション向上に繋げたりしているという。

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株式会社ヤッホーブルーイング ファンイベントユニット ユニットディレクター 原 謙太郎氏

 しかし、熱狂的なファンコミュニティを形成する同社であっても課題は存在する。近年、他社でもファンミーティングが一般的になりつつある中で、イベントが単発で終わってしまえば差別化を図ることが難しいというコモディティ化への懸念だ。また、醸造所などの拠点拡大により新規の顧客情報が急増しているものの、蓄積されたデータを十分に活用しきれていない現状も率直な課題として挙げられた。

「買う」は結果論。顧客体験を先導する新たなOMO

 こうした課題に対し、各社は最終的なコンバージョンを直接的に追い求めるのではなく、顧客の体験そのものを豊かにするアプローチへと舵を切りつつある。

 パルコは、次期会員サービスのリニューアルにおいて、アプリの役割を根本から見直す方針だ。安藤氏は、今後の戦略について「コンバージョンや売り上げは結果としてついてくるものだという発想に変えようと思っています」と明言する。新しいコンセプトでは、顧客に「特等席のような体験」を提供し、「パルコの世界への招待」を通じて顧客自身の「好き」という感情を広げることを目指す。そしてアプリは、その体験をシームレスにつなぐ「エスコートとナビゲーション」の役割を担うことになる。

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 藤原氏はこの変化について、「コンバージョンの最終ポイントを追うのではなく、中間指標をどう膨らませるかに目線が移ってきている」と分析する。顧客がパルコという空間を純粋に楽しむ体験を最大化することで、結果として持続的な収益に結びつくという中長期的な視点に立っていることがわかる。

 一方、アイスタイルもまた、「買う」という結果につながる顧客体験の向上を改めて徹底している。大西氏は、「これまでの取り組みでは、KPIが目的化してしまっていた」と反省点を挙げた上で、店舗体験の新たな要素として「参加する」と「自分を知る(わかる)」という概念を取り入れることを提唱する。

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 化粧品を選ぶ際、自身の肌の悩みを正確に言語化できる消費者は多くない。そこで同社は、膨大な口コミデータや独自の肌測定、専門スタッフによるカウンセリングを組み合わせることで、顧客自身が自分の状態を「わかる」、そして提案された商品に「納得できる」という体験の創出を目指しているという。

 藤原氏も「顧客にとって『わからないことがわかるようになる』というのはやはり素晴らしい体験」と賛同を示したように、深い納得感を伴う自己理解のプロセスを提供することこそが、情報過多時代における実店舗の強みの1つとなる。

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LTV向上に直結する「ぞっこん度」と体験の可視化

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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