「高単価なら買う層」を見逃していないか?
AIがもたらすもう一つの波が、価格設定のパーソナライズだ。米国では現在、消費者の行動履歴や購買データなどをAIが分析し、その人のWTP(Willingness to Pay・支払意思額:買いたい限界値の金額)に合わせて個別に価格を変動させる「サーベイランス・プライシング(監視価格)」が議論を呼んでいる。
日本でも導入されれば、消費者を欺く「ダークパターン」として規制の対象となるリスクが高い。しかし、両氏はここから学ぶべき点があると語り、 あえて高価格帯の「特別プラン」を選択肢として明示する戦略の必要性を提示する。

市場には「安く買いたい」という層がいる一方で、同じ商品やサービスであっても「価値を感じれば、高い金額でも喜んで支払いたい」「高いから買う」という層が一定数存在する。このWTPの差を捉えきれず、単一の価格しか提示していない企業は多い。
通常の商品に加え、オプションや特典をつけた高価格帯のプランを選択制として提示しておくことで、高単価層のニーズを取りこぼさずに利益を最大化できるのだ。
「音声メディア」が認知摩擦をなくす
続いて話題は2027年に向けて、最も注力すべきチャネルとは何か? に移った。両氏が口を揃えて挙げたのが「音声メディア」だ。メルマガ、LINE、動画などあらゆる媒体の中で、現在最も熱量が高く、成約率や売上に直結しているのが「毎日音声を聴いてくれる層」だと小山氏は言う。

遠藤氏はこの現象を「認知摩擦(面倒くさいと感じる心理的抵抗)」の低減で説明する。動画は目をそらしたタイミングで数字などの情報を見逃す可能性がある。そのため画面を見続けなければならないという無意識のストレスがともない、動画の視聴自体が避けられてしまう。一方で、音声は「ながら聴き」ができ、視覚情報がないため見逃す不安がない。結果として、動画よりも再生のハードルが低くなり、顧客との「単純接触回数(ザイオンス効果)」が劇的に増加するのだ。
小山氏の言葉を借りれば、「音声は視覚を奪わない分、ユーザーの日常に最も深く入り込むことができるメディア」である。相手に自発的な行動を促す「影響力」を発揮するツールとして、これほど優れたチャネルはないという。
なお、Voicyやポッドキャストなどの音声プラットフォームを活用する際に注意したいことは、KPIを「再生数」ではなく「コメント数」に設定することだ。リスナーからコメントが書き込まれ、それに対するリスナー同士の返信が生まれる環境づくりを意識する。これにより、強固な「音声コミュニティ」が自動的に形成されていく。
2027年へのアクションプラン
AIがすべてを効率化していく時代だからこそ、人間の温もりを感じさせる「ニュースレター」や本物の人間が存在するという「自己開示」、インフルエンサーやユーザーとの「共創コミュニティ」、そして認知摩擦ゼロで深くつながる「音声メディア」が、企業と顧客を結びつける重要な鍵となる。加えて、「高価格帯だからこそ買う」という層の取り込みの有無が肝心だ。
来たるべき2027年に向けて、自社のマーケティング施策に以上の視点が組み込まれているか、今一度社内で見直してみてはいかがだろうか。
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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)
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