本人に合う学び方を見つけるために。「成長のきっかけ」の作り方
そこで、私は「いろいろな人にアドバイスをもらってみたらどうか?」と伝えました。その方は、人と議論しながら物事を考えることが得意な人で、実際にそこからアウトプットが出ることが多かったからです。その後、その人はいろいろな部署の方々に話を聞きに行きました。情報を集め、その後も相談に乗ってもらいながらアウトプットを進め、議論を経て、中期事業戦略を策定することができたのです。
その後、その方は難しい課題に直面したとき、自分から相談相手を探して動けるようになりました。
この経験で大切だったのは、中期事業戦略という成果物だけではありません。「自分だけで考えて進まないときは、人に聞き、議論することで前に進める」という、自分に合う学び方をその人が身につけたことです。
一人で考えることが自律なのではありません。必要な知見を誰から得るかを考え、自ら相談に行くことも、自律的な行動です。
マネジメントを担う側としては、自分が育成している人が成長したときに、何がきっかけだったのかを振り返る。そこで見えてきた学び方に合わせて、次の機会や支援の仕方を考える。この積み重ねが重要なのだと思います。
フィードバックは「◯→✕→質問」の順番で
私がフィードバックで大事にしているのは、「◯→✕→質問」の順番です。まず最初に承認し、その上で成長に向けた課題を指摘し、その解決に向けて問いかけながらともに考える。この順番で対話を進めます。
まず、「◯」は「承認」です。その人の発揮された強みや、出してくれたアウトプットを具体的に認めます。
単に「良かったね」と伝えるだけでは、本人は何が良かったのかわかりません。どの強みを、どのように使い、それが何の成果につながったのかまで言葉にします。そうすることで、本人が自分の強みを認識し、次の仕事でも活かしやすくなります。
次に、「✕」は「課題共有」を意味します。次の成長に向けて、課題となっていることを伝えます。
前回もお伝えしたとおり、ここで捉える課題は、その人の強みの発揮を阻害するものです。できていないことを並べるのではなく、その強みをより大きな成果につなげるために、何を解消する必要があるのかを指摘します。
また、課題を伝えた後は、本人がどう捉えているのかを聞くことが重要です。何が起きていたのか。どこで詰まっていたのか。なぜ、その判断をしたのか。
私自身も、聞いているつもりで、頭の中では既に判断していたことがありました。しかし、本人の話を最後まで聞き切ることをしなければ、こちらの見立てだけで判断して対策を決めてしまいます。自分の見立ても仮説だと思い、丁寧に傾聴して相手の認識を確かめる必要があります。
最後に行うのが、「質問」です。「どうすれば改善できると思うか」と問いかけ、次の行動をともに考えます。
たとえば、分析力が強みのメンバーが、改善提案の合意を得られなかったとします。以下は、フィードバックの組み立て例です。
◯ 承認
「データを分解して、どこに問題があるかを明らかにできていた。そこは、あなたの強みが出ていたと思う」
✕ 課題共有
「一方で、提案を受けた方が何を判断すればよいかは、十分に伝わっていなかったように見える。あなたは、どう捉えている?」
質問
(✕に対する本人の捉え方を聞いた上で問いかけ)「次に合意を得るためには、どの情報を加え、誰と事前に話しておくとよいと思う?」
分析力という強みを認め、その分析を成果につなげるための課題を共有し、本人が改善の仕方を考える。この流れが、次の行動と成長につながります。
もちろん、言葉の強さや伝え方は、相手と状況に合わせて変えます。大切なのは、この順番を形式的になぞることではなく、本人が受け止め、次の一歩を踏み出せるところまで伴走することです。
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金井 統(カナイ オサム)
NexGen Inc. CEO
新卒でNTTドコモに入社。端末のマーケティングを経験した後、iモードでビジネス展開をする会社へのコンサルティングに従事。その後、リクルートへ転職。マーケティング室のVP(ヴァイスプレジデント)として、横断の人材育成・知見流通とHR領域のマーケティング責任者を担当。HR領域におけるToC及びToB双方のプロダクト横断での事業・マーケティング戦略、ブランディングからdirectADやSEO等のネットマーケティング、...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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