すべての生活者にセルフケアを。エスエス製薬のコミットメント
──改めて、エスエス製薬とはどんな会社なのか、教えてください。
私たちエスエス製薬は、1765年、江戸時代にまで遡る会社です。当時、まだ一部の人のものであった健康を、「すべての人が与えられるべき」という思いから、1人の男性が始めた小さな薬屋、それが私たちの原点です。

エスエス製薬は今、大きな転換期にあります。2017年からフランスを拠点とするサノフィの一事業部でしたが、2025年4月に正式に独立。100以上の国と地域で展開するOpella(オペラ)グループの傘下で新たな章を歩み始めました。
私たちの企業理念は「Health. In your hands.(あなたの健康を、あなたの手の中に)」。病院の診察では、「1日3回、2個ずつ薬を飲んで」と指示をされますが、そこには生活者の選択肢や決定権がありません。すべての生活者が自身の健康に興味を持ち、理解し、そして治療薬に手が届く、そういう社会を作っていきたい。これが私たちのコーポレートミッションです。
──エスエス製薬が、市場でどう戦っていくのか。その根本にある考え方から伺えますか?
コミットメントは大きく2つあります。1つは、年齢や性別を問わず、多くの人が抱える、困りごとや悩みに対し、「セルフケア」という選択肢を提示することです。それも現時点だけではなく、5年から10年先を見ています。どこで多くの人が悩みを抱えるのか、日常の中でケアできることは何かを見据えて、領域をかなりアグレッシブに見ています。
もう1つは、社会への意識改革です。これは、我々メーカーの責務だと思っています。物を用意してどう売るかという話ではなく、行動を変える、意識を変えるということです。
壁を取り払わなければ、本質的に誰も救えない
──BeliEVE PROJECTのように、人事制度まで変えるレベルで踏み込むと、コストもリスクも大きくなります。それでもやる理由は何でしょうか。
すべてのブランドで行っているわけではありません。ただ、困っているのに行動を起こせない「壁」がある場合は、それを取り払わない限り、本質的に誰かを救うことにはなりません。
そもそも、日本は薬に頼らない文化です。熱だろうが痛みだろうがアレルギーだろうがEDだろうが、我慢する。薬は最終手段であり、体調が限界に達して初めて使うもの、という意識が根強く、他国と比べてセルフケアへの意識が低いのです。鎮痛剤も、5人に1人しか使っていません。
そういう業界だからこそ、世論や知識を変え、わかってもらう・興味を持ってもらうところから始めるしかありません。この「壁」が、文化として根付いているものだからです。そこにアクションを取らなければ、すべてが表面的になってしまう。事業としての発展性も見込めません。
──こういった取り組みが、市場を作る。この因果はどこから来ているのでしょうか。
生活者が自分の健康を意識し始めると、行動が変わる。行動が変われば、学ぼう、比較しようという気持ちが初めて生まれる。そこに情報が届くようになる。それをやっていかないと、10年先には本当に危機になると思っています。
──「危機」というのは?
高齢化と少子化が進み、地域格差も広がる。今は病院で治療を受けられても、将来、医療サービスが十分に受けられなくなる可能性もあります。だからこそ、その前に日常的な「ケア」を当たり前にしておく。1年では変わらない、何年もかけて理解を得ていく取り組みです。事業展開の意味でも、短いスパンで新製品が出せる領域ではないので、未来を見据えないといけません。
