1兆ドル規模の購買シグナルがもたらす圧倒的精度
この学習データこそが、Criteoの強みが最も発揮される領域だ。同社のAIが学習しているのは、約7.4億のDAUが生み出す年間約1兆ドル規模の取引、約45億SKUの商品データからなる膨大なコマースデータだ。規模もさることながら、ECサイトだけでなく、オープンインターネット上の一般的なメディアでの閲覧やクリック、そして最終的な「購買」に至るまでのシグナルを学習している点が最大の強みになる。さらに、刻々と変わる在庫や価格をリアルタイムでアルゴリズムに反映させている。
技術面でも、Criteoには20年の蓄積がある。映画のレコメンドエンジンとして創業し、その技術を広告に応用してリターゲティングを開拓。モバイル、プログラマティック、GDPRと業界の変化を乗り越えるたびに最適化エンジンを磨き続け、いまやフルファネルのAIオーケストレーションへと進化してきた。

「以前のCriteoは、リターゲティングというイメージで認識いただいていた部分もあります。ですが現在は、購買意欲の高い新規顧客の獲得から既存顧客の育成、売上の最大化まで、フルファネルで支援領域を広げています」と池田氏は語る。実際、コマースデータとAIの掛け合わせによって、次のような成果が確認されている。
- 新規顧客獲得:+37%(プロスペクティングオーディエンス)
- 売上:+22%(商品レコメンドエンジン)
- CV:+7%(予測入札エンジン)
- CTR:+20%(ダイナミック・クリエイティブ最適化エンジン)
このコマースデータを土台に、Criteoはオープンウェブ、リテールメディア、AIオプティマイゼーションを組み合わせ、発見から検討、購入までコマース全体を横断して最適化する「コマース・インテリジェンス・プラットフォーム」を目指す。エージェンティックAIを単独の機能としてではなく、膨大なコマースデータと掛け合わせる——それが次世代の戦略だという位置づけだ。

エージェンティック・コマース実装の最前線
このエコシステムを、Criteoはどう形にしているのか。講演で池田氏が繰り返し強調したのは、AIレコメンデーションの「精度」だ。
「AIと自然な会話ができたとしても、在庫がない、返品率が高い、販売終了している商品を推薦してしまえば、購買体験としては成立しません。重要なのは、その会話が在庫と購買シグナルに接続されていることです」(池田氏)。
Criteoはこれを、生成AIと自社レコメンドシステムの「ハイブリッド・エンジン」で実現する。流れはシンプルだ。
- 生成AIがユーザーとの対話からニーズや利用シーンを理解・言語化する
- レコメンドシステムが実際の購買履歴・在庫・コンバージョン確率を基に最適な商品を判断する
- 生成AIが推奨理由を説明し、ユーザーごとに再順位付けして提示する
「会話力」は生成AIが担い、「何を薦めるか」の精度はコマースデータとCriteoのレコメンドシステムが担う。この役割分担がハイブリッド・エンジンの核心だ。そしてこの仕組みは、既に具体的な実装として動き始めている。

