顧客の声の「翻訳者」に。開発チームとの連携と機能の絞り込み
──前編でお話いただいたように、リサーチとソーシャルリスニングによって、生活者が「汗のベタつき」がペインだと特定した後は、製品開発チームと足並みを揃えた製品開発が重要だったのではないでしょうか。開発チームとマーケティングチームの連携はどのように設計されましたか?
両者が参加するブランドミーティングを設けることが、シンプルな出発点でした。そして、お客様の声をそのまま共有するようにしました。ソーシャルリスニングで拾った発話、期待の声、ペインの声を見せて、「次はこれをやりましょう」とコミュニケーションをする。我々が、お客様の声の翻訳者となるのです。
ただ、それだけでは足りなかった面もあります。開発チームは技術者で、良いものを作ろうとする思いからか、出口であるコミュニケーション設計を考えずに新機能を追加したくなってしまうことがありました。
たとえば、アセドロンの次のシーズンに向けた新製品開発で、汗を感じさせなくさせる方向性や汗そのものをなくしてしまう機能を追加しようと、開発チームから提案されたことがあります。それに対し、私たちは「いや、違います。ベタつき(肌離れ性)の数値の追求だけに集中してください」ときっぱり止める役割を担いました。
一般的なブランドは「ブランド名があって、その傘下に吸水や冷感など複数の機能が並ぶ」という構造ですが、アセドロンのブランドの考え方は「機能」を最上位に置いています。「汗のベタつきを解消するという機能」がコアにあって、その機能に応える品種が展開される形です。
ブランドがうまくいくと、お客様に求められているかわからないのに品種を増やすこともありがちなことです。「このブランドは、何を約束している商品なのか」。そこが絶対にブレないように制御して、求められているものを高精度で提供し続けるのがマーケの役割だと思います。
また、開発部門と出口戦略もしっかり共有します。「最終的にこういうクリエイティブで伝えていく」というコミュニケーションの設計を開発チームにも見せて、その訴求に必要なエビデンスを一緒に準備してもらう形です。
(クリックすると拡大します)
営業からの反発を越えて。クリエイティブの「言語化」が道を拓く
──機能をベタつき解消に絞るというブランド方針は、開発チームだけでなく、営業や店頭施策にも影響したのではないでしょうか。インナー売り場では多くの機能を訴求するのが一般的なだけに、社内からの抵抗はありませんでしたか?
そうですね(笑)。たとえばアセドロンのパッケージは、ブランドロゴを一番大きく目立たせる設計にしているのですが、営業からは当然のように反発がありました。業界の常識としては、機能性を示すアイコンをいくつも並べないと競合との差が伝わらない、という考え方ですよね。
私たちの考えは逆で、「このアセドロンというロゴさえ見つければ、ベタつきが解消されるという機能が担保される」という認識を、消費者に根付かせることをゴールにしていました。シャープの「プラズマクラスター」やIntelのロゴのように、そのマークを見つければ機能が保証されると直感できる、そういう記号としてのブランドロゴを最上位に置きました。
こういったことを社内で通すために重要なのは、クリエイティブを必ず言語化することです。感覚やセンスの話にしてしまうと、判断が属人的になって議論が進まない。「この目的のために、なぜこのクリエイティブはこういう構造になっているのか」を論理的に翻訳できると、会話がスムーズになります。そして、チームメンバー全員が同じ言葉で語れるようになれば、私が前に立っていない場面でも、みんながその方針で戦えます。
