SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Autumn

マーケティング最新事例 2026

ロッテ「パイの実」が仕掛ける“沼化計画” ロングセラーブランドを「推し活」の対象に変える体験設計

情緒価値の拡張とIP化「食べるお菓子」から「推したくなるブランド」へ

 機能価値の手応えを得た上で、もう一方の情緒価値をどう拡張するか。

 「メルヘンで、ほっこりして、幸せ──正直、そのくらいの設定しかなかった。それは価値であり、課題でもありました」と久保田氏は語る。パイの実の世界観はデザインの一部に留まり、明確なストーリーは設定されていなかったのだ。

 ヒントは、ヘビーユーザーの声にあった。「お腹が満たされるだけじゃなく、食べれば食べるほど小さな幸せが積み重なる」「箱のピリピリと開けるところから、宝箱を開けるように物語が始まる」「空き箱を宝箱にして大事なものをしまっていた」。

 さらに「リスに名前はないの?」「森の世界観をもっと知りたい」という声がSNSにも増えていた。顧客は、パイの実に物語性を求めていたのだ。

 久保田氏は、既に2024年9月のリニューアルタイミングで、「情緒価値」の面からも仕込みを進めていた。パイの実のパッケージの世界観を活かして、児童書出版社のフレーベル館から絵本『パイの実 森の絵本 いっしょって いいね』を発売した。

パイの実 森の絵本 いっしょって いいね

 そしてアニメーション制作の取り組みも、情緒価値の拡大を目指す延長線にある。

没入を生む「パイの実 沼化計画」

 今回のアニメーション作品は、テーマそのものを「推し活」に設定した。「今は、3人に1人が推し活をする時代です。かつての推し活は応援消費でしたが、今は自分の価値観や世界観を示す“自己表現の手段”に変わってきています」(久保田氏)。そこで、十人十色の推し活をする森の住人を配し、パッケージを超える世界観の奥行きを作り込んだ。

パイの実のキャラクター

 「ブランドマネージャーとして、お菓子はもちろん、アニメも漫画も楽曲も、すべて含めてパイの実ブランドをIPとしてどう成長させていくか。その主眼で考えています」(久保田氏)。

 長年パッケージの中だけで完結していた世界に名前と声、物語を与え、キャラクターを“生きた存在”として動かす。その器として、アニメは最適だった。

「パイの実を通して、推し活というものに存分に浸っていただきたい。可愛いだけじゃなく、“推しはみんな違っていい”ということを伝えたいんです」(久保田氏)。

 パイの実は、アニメ公開を起点に複数の接点で、世界観に“沼って”もらうことを目指したプロモーション「パイの実 沼化計画」を展開する。施策は以下の通り、視聴・音楽・体験・グッズ・屋外と、ファンとの接点を多面的に張り巡らせている。

  • オリジナル楽曲「パイしか勝たん!推しの森活」の配信
    歌唱・作詞は、テレビ東京系「おはスタ」おはキッズとして活躍する安保心結氏。作・編曲は『トロピカル〜ジュ!プリキュア』主題歌などを手がける馬瀬みさき氏。6月4日からApple Music、Spotifyなどで配信される。
  • カラオケパセラとの体験型コラボ
    新宿本店、渋谷店、横浜関内店、なんば道頓堀店ほか全11店舗で、6月4日から9月7日まで実施。「伝説のパイの実の木 プチハニトー」など、キャラクターをモチーフにしたオリジナルコラボメニューを提供。大画面ルームでのアニメ放映や、注文特典のオリジナルシール(全19種)も用意する。
  • 全国アニメイトでのグッズ展開
    クリアファイル、ポーチ、マスキングテープ、ふせん、タオルハンカチなど、ムービックが企画したファン向けグッズを全国のアニメイト、アニメイト通販、ムービック通信販売で順次発売。
  • 全国66劇場のTOHOシネマズでの上映前告知動画
    6月12日から、一部作品の上映前に期間限定でアニメ告知動画を放映。ロッテにとって異例の取り組みだという。
  • 都内主要駅での「パイの実 おしの森 総選挙」ポスター掲出
    森の住人キャラクターのうち、誰を推すかをファンに選んでもらう導線を屋外広告でも展開する。

 そして第三弾として、生成AIサービス「パイの実AI 4コマメーカー」を6月10日から64日間限定で公開。アルとの協業は、昨年の「ビックリマンAI名刺メーカー」に続く2度目だ。ユーザーが自身の写真と「推し担当」を登録すると、おしの森の住人と共演するオリジナル4コマ漫画がその場で生成される。

パイの実AI4コマ
クリックすると拡大します

 推し担当は「フキョータントゥ(布教担当)」「パクパクタントゥ(食べ担当)」「パイコレタントゥ(コレクション担当)」など8種類を用意。担当ごとに4コマのストーリーが変化し、繰り返し遊べる設計だ。

次のページ
UGCを生むのは、余白のある体験設計

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
マーケティング最新事例 2026連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

竹上 久恵(編集部)(タケガミ ヒサエ)

早稲田大学文化構想学部を卒業後、シニア女性向けに出版・通信販売を行う事業会社に入社。雑誌とWebコンテンツの企画と編集を経験。2024年翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2026/06/09 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50855

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング