情緒価値の拡張とIP化「食べるお菓子」から「推したくなるブランド」へ
機能価値の手応えを得た上で、もう一方の情緒価値をどう拡張するか。
「メルヘンで、ほっこりして、幸せ──正直、そのくらいの設定しかなかった。それは価値であり、課題でもありました」と久保田氏は語る。パイの実の世界観はデザインの一部に留まり、明確なストーリーは設定されていなかったのだ。
ヒントは、ヘビーユーザーの声にあった。「お腹が満たされるだけじゃなく、食べれば食べるほど小さな幸せが積み重なる」「箱のピリピリと開けるところから、宝箱を開けるように物語が始まる」「空き箱を宝箱にして大事なものをしまっていた」。
さらに「リスに名前はないの?」「森の世界観をもっと知りたい」という声がSNSにも増えていた。顧客は、パイの実に物語性を求めていたのだ。
久保田氏は、既に2024年9月のリニューアルタイミングで、「情緒価値」の面からも仕込みを進めていた。パイの実のパッケージの世界観を活かして、児童書出版社のフレーベル館から絵本『パイの実 森の絵本 いっしょって いいね』を発売した。

そしてアニメーション制作の取り組みも、情緒価値の拡大を目指す延長線にある。
没入を生む「パイの実 沼化計画」
今回のアニメーション作品は、テーマそのものを「推し活」に設定した。「今は、3人に1人が推し活をする時代です。かつての推し活は応援消費でしたが、今は自分の価値観や世界観を示す“自己表現の手段”に変わってきています」(久保田氏)。そこで、十人十色の推し活をする森の住人を配し、パッケージを超える世界観の奥行きを作り込んだ。

「ブランドマネージャーとして、お菓子はもちろん、アニメも漫画も楽曲も、すべて含めてパイの実ブランドをIPとしてどう成長させていくか。その主眼で考えています」(久保田氏)。
長年パッケージの中だけで完結していた世界に名前と声、物語を与え、キャラクターを“生きた存在”として動かす。その器として、アニメは最適だった。
「パイの実を通して、推し活というものに存分に浸っていただきたい。可愛いだけじゃなく、“推しはみんな違っていい”ということを伝えたいんです」(久保田氏)。
パイの実は、アニメ公開を起点に複数の接点で、世界観に“沼って”もらうことを目指したプロモーション「パイの実 沼化計画」を展開する。施策は以下の通り、視聴・音楽・体験・グッズ・屋外と、ファンとの接点を多面的に張り巡らせている。
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オリジナル楽曲「パイしか勝たん!推しの森活」の配信
歌唱・作詞は、テレビ東京系「おはスタ」おはキッズとして活躍する安保心結氏。作・編曲は『トロピカル〜ジュ!プリキュア』主題歌などを手がける馬瀬みさき氏。6月4日からApple Music、Spotifyなどで配信される。 -
カラオケパセラとの体験型コラボ
新宿本店、渋谷店、横浜関内店、なんば道頓堀店ほか全11店舗で、6月4日から9月7日まで実施。「伝説のパイの実の木 プチハニトー」など、キャラクターをモチーフにしたオリジナルコラボメニューを提供。大画面ルームでのアニメ放映や、注文特典のオリジナルシール(全19種)も用意する。 -
全国アニメイトでのグッズ展開
クリアファイル、ポーチ、マスキングテープ、ふせん、タオルハンカチなど、ムービックが企画したファン向けグッズを全国のアニメイト、アニメイト通販、ムービック通信販売で順次発売。 -
全国66劇場のTOHOシネマズでの上映前告知動画
6月12日から、一部作品の上映前に期間限定でアニメ告知動画を放映。ロッテにとって異例の取り組みだという。 -
都内主要駅での「パイの実 おしの森 総選挙」ポスター掲出
森の住人キャラクターのうち、誰を推すかをファンに選んでもらう導線を屋外広告でも展開する。
そして第三弾として、生成AIサービス「パイの実AI 4コマメーカー」を6月10日から64日間限定で公開。アルとの協業は、昨年の「ビックリマンAI名刺メーカー」に続く2度目だ。ユーザーが自身の写真と「推し担当」を登録すると、おしの森の住人と共演するオリジナル4コマ漫画がその場で生成される。
推し担当は「フキョータントゥ(布教担当)」「パクパクタントゥ(食べ担当)」「パイコレタントゥ(コレクション担当)」など8種類を用意。担当ごとに4コマのストーリーが変化し、繰り返し遊べる設計だ。
