マーケティング偏差値の統一がもたらす「真のアラインメント」
MZ:日本におけるマーケティングの停滞を脱却するために、企業はまず何に着手すべきなのでしょうか。
庭山:まずはマーケティングの「ナレッジ」を社内に蓄積することです。学ぶということに、時間とお金を投資してほしい。
ただ、現状起きていることとして、新設されたマーケティング部門の人たちだけが必死に勉強して、その他の部門とのナレッジの差が浮き彫りになってしまう現象があります。当社のサービスで「BtoBマーケティング偏差値」というアセスメントを提供しているのですが、部門間で偏差値が「10」離れるとコミュニケーションが取りづらくなり、「15」離れると喧嘩になります。
そうなると、営業から見れば、マーケは「わけのわからない横文字ばかり使う人たち」になるし、マーケから見れば、営業は「話が通じない人たち」になってしまう。これでは、連携(アラインメント)なんてできるわけがありません。

庭山:アラインメントとは、仲良くすることではありません。「同じデータと共通言語を使って会話ができる関係性」のことを言うのです。
当社は今、マーケティング部門だけでなく、営業向けや経営層向けのマーケティング研修を積極的に行っています。営業部門の方々はマーケティングを教えると吸収が非常に早いです。一年頑張ると、40台だった偏差値が60近くまで上がります。
そうなると社内でどんな会話が生まれるか。「マーケはMQLだと言って持ってくるけれど、俺たち営業が本当に欲しいリードの要件とはまだズレがあるよね。一応アクセプトはしたけれど、営業側の希望に合わせてスコアリングモデルを少し見直そうよ」という会話が営業側から自然に出るようになる。これが本当のアラインメントです。同じ言葉で、同じデータに基づいて会話ができる状態を、組織全体で学んで作らなければいけないのです。
海外の「本物の景色」を知ることからすべては始まる
MZ:組織全体で意識改革を進めるために、「最初の一歩」として何をすべきでしょうか。
庭山:まず、海外の現実を自分の目で見てみることです。私は1990年にこの会社を作りましたが、当時は日本企業のマーケティングの仕事がなく、最初の20年間、クライアントの8〜9割はSAP、オラクル、HPなど外資系の大手ハイテク企業でした。
そこで私がリアルに見たのは、同じ「日本市場」でビジネスをしていながら、外資系企業と日本企業でやり方がまったく違うという現実でした。外資系は少人数で凄まじい売上を稼ぎ出し、営業もボーナスをもらっている。一方で、日本企業は真面目で頭の良い経営層が揃い、現場もへとへとになって働いているにも関わらず売上が落ちている。
そうした光景を目の当たりにすれば、「一体何が違うんだろう」という疑問が自ずと湧いてきます。そして行き着く答えは、やはり「マーケティングナレッジ」の圧倒的な差なんです。
自社の現在地を知るためにも、まずは海外カンファレンスに参加しましょうと私はずっと言ってきましたが、今の日本企業では、予算や仕事を空ける日数の懸念から申請がなかなか通らない現実があります。熱意ある若手が素晴らしいマーケティングを学んで帰ってきたとしても、上層部が変わらなければ、現場の人間は絶望して会社を辞めてしまう。それは本人にとっても会社にとっても、日本経済にとっても大きな損失です。
行けないなら、海外のトッププレイヤーを日本に呼んで疑似体験してもらうしかない。そう私は考え、当社では世界トップクラスの事例を体感できるカンファレンスを毎年開催しています。地道な活動ですが、そうやって「本物の景色」を見てもらい、リーダー層の意識改革を促していくことこそが、現在の大きなテーマです。
