その施策は事業成長につながっているか?高まるマーケターへの期待
安成:マーケターの仕事の幅も、ずいぶんと広がり続けていますよね。
四谷:昔は宣伝部があって、テレビ枠やデジタル広告を買う、キャンペーンを打つ、で完結できた時代もありましたが、今はそれだけでは仕事は終わらないですよね。デジタルのツール市場も成熟していますし、総力戦でやらないと、ブランドのメッセージを生活者の方々に届けられない時代だと強く感じます。
安成:チャネルも顧客接点も増えましたよね。SNS、アプリ、店舗など、全ての顧客接点で最適な体験を提供してほしいという期待が、企業からも生活者からも、マーケターに寄せられる時代です。昔はCMキャンペーンをやって一区切りだったのが、今はそれぞれの施策がどう売上や顧客ロイヤルティ向上につながったのか、事業成長にまで責任を持つという意識が浸透しましたね。
四谷:施策をやるにもプライバシーの問題があるので、データポリシーを整備しなければいけない。すると法務や弁護士に相談する必要が出てくる。成果を測るツールを入れるなら、そのセキュリティ要件が会社の基準を満たしているか、情シスなど他部門と連携する必要もあります。接点が増えることで、組織を横断して協力しないとプロジェクトが回らないことが頻発しています。
マーケティングとデザイン、あるいは広報とマーケティングを一つの部署にする事業会社も出てきているように、一つの専門領域を持ちつつ、他の部署のことも理解できないと、結構厳しい。
安成:専門職だけれど、ジェネラリスト的な動きも求められている、という感じですよね。
2012年翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、新規事業を創出。2019年4月~2026年3月、MarkeZine 4代目編集長。2025年4月よりBiz/Zine編集長を兼任。2026年4月より現職。
広がるマーケティング思考の重要性
安成:マーケターの職務領域が広がる一方で、私たち編集者の仕事も範囲が広がっていますよね。読者の解像度を高めて企画をつくるのはもちろん、コンテンツデリバリーのチャネルをどうするかを考えたり、MarkeZineの取材現場で学んだことがメディア運営にも活きています。
四谷:うちもそうですね。メディアだけでなく、書籍編集部とも一緒に、本の良さを届けるために一緒に動くことも増えています。「この本ならこの編集部と組もう」とか、編集部側でイベントをやることもあります。作るだけでなく、どう届けるかまで編集者がやるべき範疇が広がって、そこにマーケティング思考が入ってきています。
安成:気を付けているのは、数字で科学するのは大事ですが、そこに軸足を置きすぎないこと。PVを稼ぐためにコンテンツを歪めるのは、むしろ逆。「役立つコンテンツを、必要としている読者に、最適な形で届ける」ための思考が重要です。中身への誠実さ、アウトプットの柔軟さ、届ける工夫。バランスよく回せるのが強いのかなと。
四谷:まさに私のメモにも「顧客の解像度を上げる必要がある」「いいものを作れば売れる時代は終わった」と書いています(笑)。ツールやチャネルが増えても、結局フォーカスすべきは読者です。そのコンテンツを必要としている人にどう届けるかを、逆算で考えないと届きません。結局はツールを使うことはあくまで手段で、人にどれだけきちんと見られるかが肝ですよ。
安成:私、編集長を前任から引き継いだときに、「マーケジンのCMOだと思って頑張れ」と言われたんです。
四谷:私は「社長だと思ってやれ」でした(笑)。
安成:その言葉には、ブランドを強くすること、PL責任を負って事業として成立させること、そして読者の信頼に応えるコンテンツを安定的に発信し続けること……MarkeZineのマーケティング戦略の立案・実行を担えという意味が込められていたのかなと。だから、良いコンテンツを作っているだけではダメというのはすごく実感があります。
四谷:大前提として、良いものを作らないと売れないし、届かない。だから「良いものを作った上で何をするか」というところなんですよね。
