「キッズスタンプUV」開発のきっかけになった課題とは?
── もう一方のヒット商品、「キッズスタンプUV」は、子どもの日焼け止め市場のどんな課題に着目したのでしょうか。
この商品のテーマは、「日焼け止めを塗るという行為を、いかに笑顔で楽しいものに変えるか」です。開発のきっかけは、子どものUV使用実態に関する調査データでした。
年齢別の日焼け止め使用率を見ると、実は3歳前後をピークに、使用率と使用頻度が急落しています。0~2歳では動きが少なく塗りやすいものの、3歳を過ぎると保育園・幼稚園に通い始め、活発に動き回るようになります。
朝の忙しい時間帯に、嫌がる子どもに日焼け止めを塗るのは本当に大変です。一方で、3歳以降こそ外出機会が増え、地面からの照り返しなど紫外線をより強く受ける年齢でもあるのです。
── その課題を解決するために生まれたのが、肉球形に出てくるスタンプ感覚の日焼け止めだったのですね。
はい。保護者へのヒアリングでも、日焼け対策をしない理由に多く挙がったのが「子どもが塗るのを嫌がる」でした。そこで、子どもが自分で使いたくなる形状と、遊び感覚で塗れる体験を設計することで、「嫌々」を「にこにこ」に転換しようと考えました。
モニター調査での反応は予想を超えるもので「このまま買い取りたい」「元の商品に戻るのが怖い」といった声もいただきました。さらにうれしかったのは、イベントで実際の使用シーンを観察する中で、子どもがパパにスタンプを押してあげるという光景が自然に生まれていたことです。日焼け止めを塗るという行為が、親子のスキンシップの時間になっていたのです。これは私たちが最初に描いていた以上の価値創出でした。
3つの「S」でコミュニケーションを設計
──マーケティング活動においては、インサイトを捉えた商品を生み出すことに加え、それを市場にしっかり広げていくことも重要です。ビオレUVのコミュニケーション設計において、重視しているポイントを教えてください。
ビオレのコミュニケーション設計で大切にしているのは、3つの接点をサイクルとして回すことです。Scene(使用場面)、SNS・UGC戦略・クチコミ、そしてStore(店頭)—— 頭文字を取って「3Sサイクル」と呼んでいます。
起点になるのはScene(使用場面)です。製品体験そのものが、最も重要なコミュニケーションの場です。使った瞬間に驚きが生まれる製品設計ができていることが、すべての前提になります。どれだけ広告にお金をかけても、製品体験がともなわなければSNSでは広がらないし、店頭でリピートも起きません。
次がSNSです。日焼け止めに関するSNS上の発話量には、明確な3つの山があります。それは2月末から3月、5月、7〜8月です。7〜8月の盛り上がりは直感的に理解できますが、注目すべきは2月末から3月にかけてのピークです。このタイミングに何が起きるかというと、美容感度の高いユーザー層が「今年の日焼け止めはこれだ」とSNSで一斉に紹介しようとします。ここで評判形成ができていると、5月や7〜8月の盛り上がり時に圧倒的なシェアオブボイスを取れる。この構造を踏まえてSNS戦略を組み立てています。
最後がStore(店頭)です。日焼け止めのようなシーズン商材は、ドラッグストアでも最も目立つ場所に展開されます。この店頭における驚きをどう設計するかが非常に重要です。
補足すると、テレビCMやデジタル広告といったプッシュ型広告は、この3Sサイクルを加速させるためのブースターと位置づけています。広告で話題を増やしリーチを広げることで、サイクルがより大きく回っていくという考え方です。
