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MarkeZine20周年特別企画

未来の種は生活者の中にある。博報堂生活総研 所長に聞く、AI時代のマーケターが向き合うべき変化の兆し

マーケターがとらえるべき生活者の変化の兆し

──マーケターがフォーカスすべき「生活者の変化の兆し」とは何でしょうか。

 2013年にバンコクに駐在した際、タイの生活者の行動から感じたことがあります。それは、テクノロジーの「階層」に対する意識の違いです。

 一般的に、東南アジアではFacebookが盛んなイメージがあります。なぜかというと、SNSを「OS」としてとらえているからではないか、と私は考えています。

 パソコンの普及を段階的に経験した世代は、Windows95などのOSがあり、その上にSNSやECなど目的別のアプリケーションがあると認識しています。ところがタイでは、スマートフォンとFacebookがリープフロッグ(※)して同時に社会に浸透しました。そのためFacebookをすべての動作の土台となる「OS」ととらえ、Facebookの中で、写真の投稿もビジネスもすべてを行う発想になるのです。

※リープフロッグ現象:新興国や途上国において、先進国が時間をかけて発展させてきた既存の技術や社会インフラを飛び越え、最新技術が一気に普及することで急速な発展を遂げる現象

 これは国による違いというより、世代の違いと言えます。テクノロジーの進化を段階的に経験した世代と、最初から最新技術に触れている世代とでは、テクノロジーとの付き合い方が根本的に異なるのです。タイに限らず、日本のZ世代、アルファ世代でも、まさにこうしたギャップが生じているのではないでしょうか。

アナログの価値を「新発見」する生活者たち

──世代間のギャップとして、テクノロジーに対する認識の違いに加え、日本ではどのような動きが起こるでしょうか。

 2025年、生活総研では「育てるデジタル、信じるアナログ 両利き化する生活者」というテーマで調査を実施しました。2020年以降のコロナ禍により生活のデジタル化が一気に進んだあと、リアルな接触が回復して生活者の価値観はどのように変化したか調査したのです。

 調査結果からは、コロナ禍以降もデジタル化が定着している一方で、アナログ回帰の傾向も見られました。すなわち、デジタルとアナログの両利き化です。

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 レコメンドやタイムラインという新たな概念を便利に感じる一方、Oxford word of the year 2024において「Brain rot(脳の腐敗)」が今年の言葉に選出されたように、テクノロジーにより主体性が損なわれている感覚が広がっているようです。

 特に、アナログ回帰志向は若い世代のほうが強いようです。青春時代にリアルな接触が断絶した世代は、アナログの価値を「再発見」ではなく「新発見」していると言えるでしょう。たとえば、道に迷わないために開発された位置情報アプリが、現在は行ったことがない場所を探検し、偶然の出会いや迷うことを楽しむために使われるなど、価値観の転換が生じています。

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ビジネスと日常の融合が生み出す感情ミュート社会

──世代別の変化以外にも、現在の日本社会全体に見られる傾向はありますか。

 2026年に発表した「感情ミュート社会 出さない時代の新欲求」では、日本社会全体の傾向として、自分の感情を出す機会や相手が減っていることが明らかになりました。これは古くからある「本音と建前」の文化とはまた異なります。家族や友人にさえ、ネガティブな感情だけでなくポジティブな発言も抑えている生活者が増えているようなのです。

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 こうした変化が起こるのは、いくつかの理由があります。サービス業など第三次産業の増加もあれば、「○○ハラ」や炎上に対するコンプライアンス意識の高まり、そしてタイパ・コスパといった経済合理性の追求も理由の一つでしょう。

 特にコンプライアンス意識や経済合理性の追及は、これまでビジネス領域で採用されていた論理が、日常生活の中に浸透してきたとも言えます。その是非はともかく、マーケターはこの変化をしっかりととらえ、そこから生じる新たなニーズに応えなければなりません。

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この記事の著者

高橋 愛里(編集部)(タカハシ アイリ)

新卒で総合情報サービス企業に入社し、求人広告の制作に携わる。2023年翔泳社入社。SalesZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/07/22 08:30 https://markezine.jp/article/detail/77076

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