専任組織は持たない。BtoCの延長線上で挑む「暑さ対策の支援」
松本:「ビオレの冷サポート」事業には、様々な部署やチームが参加していると伺いました。皆さんは、本来の業務と並行しながら、この事業にも携わっているのでしょうか。
小林:実は、「ビオレの冷サポート」事業を専門に推進するBtoBマーケティングチームが、独立した組織として存在するわけではありません。普段はBtoC事業を担うマーケティングチームやブランドチームが中核となり、製品を通じて社会課題解決を目指すという共通の思いを持って取り組んでいます。
実際に、チームで清水建設の現場を訪問した際は、非常に過酷な環境を目の当たりにしたことで、役立たなければならないという使命感が強まりました。
PRチームは事例の見える化、営業チームは花王グループの販売会社である、花王グループカスタマーマーケティングのルートを活用した顧客へのヒアリングやソリューション提案、研究開発チームは清水建設の現場を訪問しての実証実験。各チームが様々な役割を担っていますが、いずれのメンバーも普段はBtoC向けの業務に携わっています。
私たちはBtoCとBtoBを明確に切り分けてはいません。ブランドとして世の中にどのようにお役立ちできるか。その延長線上にBtoBという新しい生活者との接点があるのではないかと考えています。
松本:「ビオレの冷サポート」は、「ビオレ 冷タオル」を企業に販売するだけの事業ではないということですね。
小林:そうですね。企業の暑さ対策を支援するBtoB事業です。ビオレはこれまでも製品を通じて新しいスキンケア習慣を提案してきました。今回の事業は、企業が暑さ対策に取り組む際の「エントリーソリューション」と位置づけています。この点は、BtoC領域で新しいスキンケア習慣を提案してきたアプローチにとても似ています。
BtoC事業との大きな違い「事例作り」の威力
松本:BtoB事業を展開する中で、BtoC事業と共通する点や異なる点はありましたか。
小林:BtoCとBtoBで最も大きな違いは「商品を使う人」と「商品を購買する人」が異なるという点です。だからこそ、私たちは労務担当者だけでなく、現場で実際に働く方々の声も重視しています。
もう1つの大きな違いは、BtoBでは「事例作り」がマーケティングそのものになるという点です。BtoCでは「広告」や「体験」が非常に重要ですが、BtoBでは「自社でも再現できそう」と判断してもらうための事例作りが極めて重要になります。
松本:BtoBでは「事例作りがマーケティングそのものになる」と確信したきっかけは、何だったのでしょうか。
小林:清水建設との取り組みを始める前にも、冷タオルを職場に導入してもらう提案を実施したことはありました。その段階では、商品を建設現場で使う具体的なイメージを持っていただきにくい状況でした。しかし、清水建設とのご縁があり、導入事例を公開したところ、他社でも「清水建設が導入しているのに、なぜ当社では導入していないのか」という議論が起こるようになったと聞いています。
小林:事例を通じて、商品がもたらす具体的な便益や、現場の方々に喜んでいただいている様子を伝えられるようになりました。それが、営業担当者のモチベーション向上にもつながったようです。
松本:素朴な疑問なのですが、BtoBであっても相手は一人の人間です。御社の知名度やブランド力があれば、事例がなくても「信頼できる企業のブランドだから良い商品だろう」と導入が進むようにも思えます。それでもやはり、事例があって検討が進むケースが多かったのでしょうか。
小林:そうですね。そもそも「ビオレ 冷タオル」の認知率は、まだ3割程度にとどまっています。特にBtoBの決裁者層は、普段ビオレがアプローチしている女性層とは異なるため、ブランドとの接点が少なかったのだと思います。そのため、導入を検討していただくには、事例による裏付けが不可欠でした。
一方で、現場で商品を体験した方から「普段の生活でも使用したい」という声が多く寄せられています。こうした反応からも、BtoBとBtoCはつながっていると実感しています。
