プロでも陥る、最大の落とし穴「確証バイアス」
インタビューで最大の注意点が「確証バイアス」です。これは「自分の仮説に合う情報ばかりを無意識に集め、それに反する情報を無視・軽視してしまう」心理傾向のこと。インタビューでは主に3つの形で現れます。
1つ目は「聞き逃し」。たとえば、相手が「機能は良いんだけど、使い勝手が悪くて」と言っていても、後半の否定的なニュアンスを聞き流してしまいます。2つ目は「誘導」。無意識のうちに、「〜ですよね?」と同意を求める聞き方になってしまいます。3つ目は「結論ありきになる」。「思った通りだ」と満足して深掘りをやめてしまうのです。
確証バイアスについて、具体例で見ていきましょう。あるSaaSサービスの解約理由を探るインタビューで、「料金が高かったから解約したに違いない」という仮説を持って臨んだとします(図表3-1、3-2)。
悪い例では、「やはりコスト面の負担が大きかったのでしょうか?」と誘導的に聞き、相手の「まあ、予算は常に厳しいので」という返答を「やはり料金がネックだ」と早合点して終わります。
一方、良い例では「解約の一番の決め手は何でしたか?」とオープンに聞きます。すると「現場が『使い方が難しい』とログインしなくなって……。実はA社の方が料金は少し高いのですが、入力がスマホで完結するので現場がそちらを選んだんです」という答えが返ってくる。仮説を脇に置いたことで、「高くても使いやすいほうが選ばれる」という思い込みを覆す事実に辿り着けるのです。
確証バイアスを避けるための心構えは3つです。
確証バイアスを回避する3つの心構え
- 「正解合わせ」ではなく「死角探し」をする
- 「やっぱりそうだった」より「まさか、違った」を喜ぶ
- 仮説を「守る」のではなく「壊し」にいく
インタビューは仮説が正しいと証明する場ではなく、どこが間違っているかを確かめる場だと考えると、バイアスは外れていきます。そして強調したいのは、これは初心者だけの問題ではないということです。むしろ「自分はわかっている」と思っている人ほど危ないのです。それを痛感した私自身の体験をお話しします。
プロの失敗談:AIに指摘された「誘導」
私は新規事業開発に携わる中で、これまでクライアントへのインタビューを数多く重ねてきました。「聞く」ことにはそれなりの自信があったつもりです。
あるとき、過去のインタビュー発言録(文字起こし)を生成AIに読み込ませ、「インタビュアーとしての出来を採点してほしい」と頼んでみたところ、返ってきた点数は80〜85点でした。悪くはないけれど、満点ではない。さらに問題は、そのマイナスの理由でした。
いずれの回も共通して、「『〜という状況ですよね?』と、自分の仮説の枠に相手の回答を収めようとする誘導質問(クローズドクエスチョン)が多い」と指摘されたのです。また、相手が想定外の面白い提案をくれた場面において、自社の現状の枠にはめて打ち消し、インサイトを深掘りせずに話を進めていたとも指摘されました。さらに、冒頭の自社説明が長すぎて相手の思考を誘導している、という「話しすぎの癖」まで見抜かれていたのです。
つまり私は、まさに確証バイアスの「誘導してしまう」「結論ありきになる」を無意識にやっていたのです。フラットに聞いているつもりでしたが、実際には自分の仮説や自社の事情に合うように会話を運んでいたということです。
経験を積んでも、無意識の思い込み(バイアス)からくる聞き方の偏りにはなかなか気づけないものです。確証バイアスはそれほど根深く、さらに場数を踏んだからこそ「わかっているつもり」で気づきにくくなる側面さえあります。私の場合、偏りを冷静に分析してくれたのがAIでした。
この経験は、「AIは自分の聞き方を客観視するチェック役になる」という発見でもありました。
