Doom Loop脱却の期限は18ヵ月後
暗い調査結果が続く中、ローゼン氏は1つの光明を示した。今回初めてエージェント型AIを生成AIと区別して質問した結果、注目すべき違いが表れたのだ。エージェント型AIを「採用している」と回答した広告代理店が51%だったのに対し「定期的に使っている」と回答した人は28%に留まった。用途も要約や文字起こしなど、生成AIと大差ない。

しかしクライアントの期待は決定的に違う。生成AIへのコスト削減期待が71%であるのに対し、エージェント型AIへのそれは32%まで下がる。つまり、クライアントがエージェント型AIを「コスト削減の道具」ではなく「新しい価値を生み出すもの」として見ていることが初めてデータで示されたのだ。
ローゼン氏はこのデータに転換の糸口を見出し「生成AIはOptimizer(最適化装置)だ。一方でエージェント型AIはOriginator(新たな価値の創造者)になり得る」と語る。広告代理店がDoom Loopから抜け出せるかどうかは、この新しいカテゴリに対してクライアントの印象が固まりきる前に「エージェント型AIの活用目的はコスト削減ではなく、新たな価値を生むことだ」と先手を打てるかどうかに懸かっている。
「Doom Loopからの脱却を果たすために残された時間は最長18ヵ月」とロックホーン氏は試算している。エージェント型AIに対するクライアントの期待が「コスト削減」へと染まりきる前に動けるかどうか——ここが今後の競争優位を左右する分水嶺だ。
日本でもエージェント型AIへの関心は高まっているが、多くの場合はまだ「効率化ツール」として語られがちだ。いかに価値創造の文脈でエージェント型AIの活用を定義し直すか。日本の広告代理店が今から解を準備すべき問いだろう。
脱却の処方箋は「言語の変更」と「コストの見える化」
では、Doom Loopから抜け出すために何をするべきか。2日目のテクノロジートラックでは、ロックホーン氏が次の2つの処方箋を示した。
1.言語を変える:「効率化」から「イノベーション・成長」へ
ロックホーン氏が最初に提示した処方箋は、AIの効果について語る言語を変えることだ。75%の広告代理店が「イノベーションの促進」をAIの戦略目標に挙げながら、誰もその成果を測定していない。
そこで「この仕事は成果を生んだか」「クライアントは新しい能力を得たか」「コミットメントは増えたか」という3つの問いをクライアントとの対話に埋め込むようロックホーン氏は提言。そうすれば言語が変わるという。
2.AIコストを可視化し、価格モデルを段階的に転換する
「クライアントの多くは、月額20ドルの利用費がAI投資のすべてだと思っている。しかし実際には、1ドルの技術投資に対して5、6ドルの関連コストが発生している」とロックホーン氏は指摘する。
AIコストを可視化してクライアントを教育し、まず1社とのパイロットプログラムから価格モデルを変えていくこと。さらに、クライアントの調達部門とマーケティング部門を同じテーブルに座らせ「AI投資とは何か」の共通認識を作ることが鍵だと語った。
