「クリック前の意思決定」に影響を与える会話型AI
従来の検索では「エベレスト登山、必需品」のようなキーワード検索が行われる一方、AI/LLMによる発見では「5月にエベレスト登山を計画している。必要な装備は何か。荷物はできるだけ軽くしたい。予算は5,000ドルで、身長・体重はこの条件」といった、より具体的な相談が行われる例が示された。
この違いは、広告機会にも影響する。従来の検索広告では、キーワード入札を行い、キーワードから意図を推定し、ブランドはクリック獲得競争を行う。一方、会話型AIでは、調査・検討の瞬間に広告を表示し、会話の意図に沿った広告配信を行い、クリック前の意思決定に影響を与える可能性があると説明された。
なお当日のセミナー会場では、既にChatGPT広告を見たことがあると答えた参加者が2割程度いた。日本での配信開始から間もない段階であることを考えると、広告業界やマーケティング関係者の関心の高さがうかがえる。
一方で、現時点では有料版には広告が配信されないという説明であった。これは広告を避けたいユーザーにとっては望ましい設計である一方、広告主やマーケター、広告会社、研究者など、実際に広告体験を確認したい人にとっては少し悩ましい。
広告配信は「回答の下」に。受け手と広告主に配慮した設計
ChatGPT広告の配信方法について山口氏は、「ユーザーの質問内容との関連性が高い場合に限り、会話の回答の下部に表示される」と説明した。表示される広告は現状1枠であるとのことだ。
配信の流れとしては、まずユーザーが通常にプロンプトを入力するとそこに関連性の高い広告候補を取得する。その上で、関連性モデルが最適な広告を選択するという構成とのことだ。
広告配信を決定する要素としては特に重視されるのがこの「関連性」で、広告クリエイティブがユーザーの質問内容とより一致しているほど、広告が配信される可能性が高くなると説明された。
また先述のとおり、広告は回答本文に混在するのではなく、会話の回答の下部に表示される。広告であることをユーザーが認識しやすい形で示すことが、ChatGPTに対するユーザーの信頼性を奪わないための「前提」となる。
では、その安全性はどうか。「適切で、安全かつ、ユーザーの信頼とブランドセーフティを損なわない場合にのみ表示される」との説明とともに、具体的な機能が2つ示された。
1つは「インテグリティフィルター」。これは、センシティブなコンテンツに広告を表示しないための仕組みだ。ChatGPTでは、ユーザーが日常的な買い物相談だけでなく、健康、家族、仕事、人生上の悩みなど、様々な相談を行う可能性がある。そのため、どの文脈で広告を表示し、どの文脈では表示しないのかは重要な設計要素になる。
もう1つは「この広告について」の機能。広告表示の理由やポリシーについて、ユーザーに明確な説明を提供するものだ。広告主、表示理由、広告主に共有される情報、ユーザーデータの扱いなどを確認できるようにすることで、広告表示の透明性を高める狙いがある。
