AI広告が価値提供するための「2つの信頼関係」
瀬戸氏が重要性を指摘するのは、「ChatGPT」と「ユーザー」の間の信頼、そして「広告主」と「消費者」の間の信頼である。
ChatGPT広告では、ユーザーがAIの回答を信頼している場に広告が表示される。したがって、広告が回答に影響しているのではないか、広告主の意向で回答が変わっているのではないかという疑念が生まれれば、ユーザーの信頼は損なわれる。
同時に、広告主と消費者の関係においても、なぜその広告が出ているのか、どのような根拠で表示されたのか、広告であることが明確に示されているのかが重要になる。
瀬戸氏は、「なんだかよくわからないけどレコメンドされる」と生活者が感じるような不透明なコンテンツや広告から脱却し、透明性と納得感のある関係性を構築することの重要性を指摘した。この点は前編で触れた「回答の独立性」という原則や、「この広告について」などの機能が大きな役割を担うだろう。
生成AIで広告はどう変わる?広告主が意識すべき4つのこと
セミナー後半では、生成AIプラットフォーム上に広告が出ることについて、広告主が何を意識すべきかが議論された。挙げられたのは、次の4つだ。
1つ目は、「UX」について。ChatGPT上に広告が表示されたとき、ユーザーはそれをどう感じるのか。会話の流れの中で自然に受け止めるのか、それとも邪魔だと感じるのか。広告主は、出稿の前にユーザー体験としての見え方を確認する必要がある。
2つ目は、見るべき「KPI」。クリック率、コンバージョン、CPAなど、従来の広告指標をそのまま適用できるのか。それとも、会話型AI上の広告には、調査・検討段階への影響やクリック前の意思決定支援といった別の評価軸が必要になるのか。ここは今後の検証が必要である。
3つ目は、向いている「業種」。ユーザーがAIに相談しながら比較検討する商品やサービス、たとえば小売、旅行、家庭・住居、美容、料理、自動車、電子機器、アクティビティ、フィットネスなどは相性が良い可能性がある。一方で、医療、金融、法律、政治などのセンシティブな領域は、広告表示の制限や慎重な運用が必要になる。
4つ目は、「現時点ではまだパイロット版であること」だ。ChatGPT広告は日本でも始まっているが、管理画面、配信ルール、レポート機能、ユーザー側のコントロールは、今後変わっていく可能性が高い。
また終盤では、生成AIで広告はどう変わろうとしているのかを考えるために、消費者、プラットフォーム、広告主の三者関係も示された。
従来のインターネット広告でも、消費者、媒体、広告主の三者関係は存在していた。しかしChatGPT広告では、その中心にAIとの会話が入る。消費者はAIに相談し、プラットフォームは回答の信頼性を守りながら広告を表示し、広告主はどの会話文脈で広告を出すべきかを考える。
これは、広告の歴史の中でも大きな変化だ。初期のインターネット広告では、広告主は媒体面を買っていた。検索広告では、検索語を買った。SNS広告では、人や興味関心を捉えた。生成AI広告では、会話文脈が新しい接点になりつつある。
したがって、ChatGPT広告は単なる新しい広告枠ではない。インターネット広告が、検索語や属性を超えて、ユーザーの相談や意思決定の文脈へ近づく最初の実験として捉えることができる。
