SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Autumn

マーケティング最新事例 2026

“競技”から“産業”へ。新興スポーツ「ピックルボール」の立ち上げに学ぶ市場形成戦略

民間企業の役割は?産業立ち上がり期に注力する「実装」

──現在、ピックルボールは「立ち上がりフェーズ」のようですが、市場の拡大について貴社ではどのように捉えていますか。

熊倉:一過性のブームではなく、本格的な「産業」として立ち上がる瞬間だと確信しています。

 アメリカでは既に年収10億円を稼ぐと言われているトップ選手が生まれ、観るスポーツとしても成立しています。2032年にはオリンピック競技になる可能性も囁かれており、生涯スポーツとして楽しむ人だけでなく、プロを目指すジュニア選手も増えています。

 サッカーが長い時間をかけて現在のワールドカップのように興行化されてきたように、ピックルボールも今まさにその歴史の第一歩を踏み出しているタイミングです。

画像を説明するテキストなくても可
出典:【日本のピックルボール市場調査2026】競技人口33万人・潜在1,189万人─急拡大する新興スポーツの実態(クリックすると拡大します)

──競技人口を増やす上で、市場の起爆剤となるものは何だとお考えですか。

熊倉:スポーツ推薦による大学進学が可能になることが、実は大きなキーポイントだと思っています。たとえば有名大学がピックルボールでスポーツ推薦枠を設ければ、親御さんが子供の教育として投資しやすくなります。遠征費やコーチ代、道具にお金が回るようになれば、市場は一気に潤い、拡大していくはずです。

──競技普及に向けて、ピックルボールワンとしては具体的にどのような役割を担っているのでしょうか。

熊倉:私たちは「市場に足りないものを、自らリスクを取って一つずつ事業として埋めていく」というスタンスで活動しています。

 創業当時、「どこでプレーできるか」という情報を探してみてもまったくなかったため、まずはWebメディアを立ち上げるところからスタートしました。次にイベントの企画・運営を手がけ、最大の課題であった「場所(コート)」の整備に取り組みました。昨年の11月に銀座でコートをオープンし、今では稼働率がほぼ100%に達しています体験会には既に2万人以上の方に参加していただき、今後は複数のコートを増やしていく予定です。

画像を説明するテキストなくても可
ピックルボールワンが展開するコート(同社リリースより)

──競技を統括する協会と、民間企業である貴社との役割の違いはどういった点にありますか。

熊倉:最も大きな違いは、「自分たちで費用や在庫のリスクを取って事業として行っているか」という点です。協会が体験会や大会を開催して競技を広める一方で、私たちは営利企業としてコートの賃料や人件費などのリスクを背負い、しっかり収益を上げて市場に還元しています。サステナブル(持続可能)に産業を伸ばしていくためには、両者の存在が不可欠です。

グロースパートナーとして、成長プロセスにある余白に着目

──電通グループとして、ピックルボールワンへの出資や産業の成長基盤を構築していくための支援を行っているとうかがいました。どのような意図があるのか教えてください。

中司:ピックルボールという競技自体の可能性はもちろんですが、「新興スポーツが市場として立ち上がるプロセス」そのものにビジネスの可能性を感じているのが大きな理由です。

 野球やサッカーのような成熟したスポーツは、ファンやチーム、リーグ、放映権といった産業構造が出来上がっていて、企業はそこにどうブランドを接続するかを考えることが多いと思います。一方で新興スポーツの場合は、まだ市場が完成していないからこそ、競技の成長基盤をゼロからともに構築していく“余白”があります。

──どのような立ち位置で企業としてのアセットを活かしていくのでしょうか?

中司:私たちは単に広告枠を売ったり、スポンサーになっていただける企業を探すだけの存在ではありません。ピックルボールワンさんと一緒に成長基盤を作る「グロースパートナー」としての立ち位置を重視しています。

 ピックルボールは世代や性別を超えてつながりやすく、健康、ウェルビーイング、地域コミュニティ作り、企業間交流、都市空間の活用といった様々な社会的文脈と接続しやすい特徴を持っています。ピックルボールワンさんが形作ってきた「生活者が競技に出会い、誰かとつながれる時間や場所」に対して、電通が持つ企業接点や生活者インサイト、あるいは事業開発やメディア化・コンテンツ化の知見を掛け合わせることで、一過性のトレンドではなく持続可能な産業へと育てていきたいと考えています。

次のページ
「プレーヤーが主役」という純粋性と共存するビジネス視点のあり方

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
マーケティング最新事例 2026連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2026/08/04 07:30 https://markezine.jp/article/detail/77167

Special Contents

PR

Job Board

PR

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング