ステップ(1)個の強みと、強みを阻害する課題を定義する
人の強みを活かすと言っても、その強みはどのように把握すればよいのでしょうか。
私がマネージャーをしていた頃も、メンバーから「自分の強みがわからない」「特に言えるような強みはありません」と言われることがよくありました。
ただ、これは断言できます。強みがない人はいません。なぜなら、強みとは他者と比較した相対的な能力だけを意味するのではなく、その人の中にある絶対的な強みも含むからです。
ここでいう「絶対的な強み」とは、誰かと比較して優れているかではなく、その人自身が比較的苦労を感じず、繰り返し高いアウトプットを出せる特性を指します。
その行動をしていると夢中になって時間を忘れてしまったり、長時間取り組んでいても苦にならなかったりするものです。
つまり、周囲から見れば大変そうに見えることや、「自分にはとてもできない」と思うことを、その人は大きな苦労を感じずに行っているのです。
たとえば、以前「数字を整理することは瞑想です」と話すメンバーがいました。その人にデータ整備を任せると、誰よりも速く、正確に仕上げてくれます。忙しそうなときにお願いしても、むしろ喜んで対応してくれました。
そのアウトプットは、私が行うよりも遥かに精度が高く、スピードも速いものでした。そこで、なぜそれほど苦もなくできるのかと聞いたところ、「データを整理すると、事業の構造や課題がわかるからです」と答えました。
つまり、その人は事業構造を理解したいという欲求が強く、そのために必要なデータ整備や分析を行うことが苦にならないのです。
私は、この人の強みは「データ分析から課題を構造化する力」にあると理解しました。それ以降、この種のお題は基本的にその人にお願いすることにしました。本人にとっても組織にとっても、そのほうが幸せだからです。
「誰々のほうが」を議論しない。絶対的な強みを言語化する
相対的に見れば、その力が市場で突出しているのか、という疑問もあるかもしれません。しかし、その強みが「その仕事をやり遂げるために十分な強み」であればよいのです。
その仕事を期限内に、求めるアウトプット水準で出せるのであれば、組織として何の問題もありません。「別の人のほうが速い」「あの人のほうが丁寧だ」という相対的な議論は、必ずしも必要ではないのです。
強みの基準は、その人にお任せする機会、つまり仕事で成果が出るかどうかです。他者と比較してどうかではありません。これが、「絶対的な強みを見る」という考え方です。
絶対的な個の強みと事業や組織の課題がひもづくメンバーが増えれば、組織全体のパフォーマンスも高まっていきます。
マネジメントを担う人にとっては、メンバーが自ら進んで取り組んでいることや、そのアウトプットから強みを見つけてあげることが重要です。一方でメンバー自身も、普段取り組んでいることの中から、「なぜか苦もなく、楽しみながらできていることは何か」を振り返ることで、自分の強みを把握できると思います。
ぜひ、双方でその強みを言語化してみることをおすすめします。
その上で、その強みを市場や組織の中でどの水準まで高めていくのかを、本人とマネジメントの双方で議論します。目指す水準と成長角度が明確になれば、キャリアと成長機会がひもづいたミッションを設計でき、本人の納得感やモチベーションも高めやすくなるのではないでしょうか。
