SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Autumn

マーケターの「直感」を「論理的な戦略」に昇華する「5Sフレームワーク」

AIで広げた選択肢から「納得解」を選択する――5Sフレームワーク「Settle」の技術

「S:Settle(決断)」の3ステップ

 CEP、広告表現、Webサイト導線、店頭での案内、予約導線、初回サポート、継続施策。ここまでのプロセスで、企画を構成する材料はかなり具体化されてきました。最後に必要なのは、それらを戦略として成立させるための「つながり」を確認することです。顧客課題と選んだCEPはつながっているか。接点ごとの表現は同じ方向を向いているか。現場は無理なく動けるか。事業として必要な獲得数や継続率に届く見込みはあるか。Settleでは、こうした論点を横断して見直します。

 AIが出した部品をそのまま採用するのではなく、顧客・市場・自社・接点が一本の筋でつながっているかを確認する。そのうえで、顧客感情、現場運用、事業制約に照らし、実行時にどこで摩擦が起きそうかを読み直し、実行に移す条件を決めます。

 具体的には、次の3つのステップで考えていきます。

1.顧客・市場・自社・接点が一本の筋でつながるかを確認する

 最初に、これまで出てきた材料を横に並べ、企画全体の筋を点検します。

 Seeで見えた顧客の不安や違和感、Structureで読んだ市場や競合の構造、Selectで絞った勝ちにいく場面、Solidifyで考えた接点ごとの訴求や改善案。これらが同じ方向を向いているかを確認します。

 ここでAIに任せたいのは、答えを出すことではなく、話が飛んでいる箇所や根拠が弱い箇所を見つけることです。顧客課題と選んだCEPのつながり、市場や競合の構造から見た勝ち筋、接点ごとの表現の一貫性を点検し、企画が自社に都合よく組み立てられていないかを確認します。

【AIへのプロンプト例】

以下の企画について、顧客課題、市場・競合、自社の強み、選んだCEP、接点ごとの施策が一貫しているか確認してください。話が飛んでいる箇所、根拠が弱い箇所、都合よく解釈している箇所があれば指摘してください。

2.顧客・現場・事業の文脈で、実行時の摩擦を読む

 次に、AIが整理した案を、人間が読み直します。資料上は整っていても、実際に動かすと摩擦が出ることがあります。ここで見るのは、顧客の受け入れやすさ、現場での運用負荷、予約枠やスタッフ配置、予算、サポート体制などです。数字や文章だけでは見えにくい実行上のひっかかりを確認します。

 AIは摩擦の候補を整理できます。ですが、その摩擦を現場で吸収できるのか、事業として受け入れられる範囲なのかは、人間が判断する必要があります。Settleでは、案の見栄えだけでなく、現実に動かせるかどうかを確かめます

【AIへのプロンプト例】

以下の施策案について、顧客感情、現場運用、事業制約の3つの観点から、実行時に起こりそうな摩擦を整理してください。そのうえで、実行前に確認すべき論点と、開始後に見ていく論点に分けてください。

3.市場成立性を見て、進める条件を決める

 最後に、対象とする顧客、思い出されたい場面、接点ごとの伝え方を整理したうえで、この仮説が市場で成立する規模に届く可能性を確認します。ここでは、ベースライン予測、楽観シナリオ、悲観シナリオを置きます。確認するのは、必要な獲得数、認知や想起の水準、開始後に見るべき指標、継続・見直し・停止の判断条件です。

 もちろん、この段階で正確な未来予測はできません。重要なのは、数字を当てることではなく、進める条件と見直す条件を置くことです。ここまで決めることで、AIとの壁打ちやPoCは「よい学びがあった」で終わらず、経営判断に接続しやすくなります。

【AIへのプロンプト例】

以下の企画について、市場成立性を確認するための論点を整理してください。ベースライン予測、楽観シナリオ、悲観シナリオを置いたうえで、必要獲得数、必要な認知・想起水準、開始後に見るべき指標、見直し条件を整理してください。

ケーススタディ:前例の少ない新サービスの立ち上げをどう決断したか

 たとえば、前例の少ない新サービスを立ち上げるケースをイメージしてみましょう。

 そのサービスを求めている顧客は確実にいるし、うまく形にできれば、既存事業の価値を広げられ、新しい収益源を創出できる。そんな大きな可能性がある一方で、参考にできる成功事例がほとんどないと、やはり不安は残ります。調査や議論を重ねるほど、可能性と同時に、決めきれない論点も見えてくるものです。

 私もまったく同じ状況を経験したことがあります。そのとき必要だったのは、さらに材料を増やすことよりも、集めた材料を判断できる形へ整えることでした。顧客の困りごと、既存事業の強み、支援を求める可能性、対価を払う理由、現場で続けられる条件、事業として成立する規模。それらを一本の筋としてつなぎ、どの条件が見えれば進めるのか、どの状態になれば見直すのかを決めていきました。

 最後は、進める条件と見直す条件を置いたうえで前に進みました。不安をすべて消してから決めるのではなく、不安が残る中でも判断できる状態をつくる。ここがSettleの役割です。

次のページ
5Sフレームワークが示す、顧客理解と事業判断のつながり

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
マーケターの「直感」を「論理的な戦略」に昇華する「5Sフレームワーク」連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

日ノ澤 恵莉(ヒノサワ エリ)

積水ハウス イノベーション&コミュニケーション株式会社 CRO(Chief Research Officer) 

Royal Holloway, University of London MBA修了。オリエンタルランドでテーマパークのマーケティング戦略・商品企画を担当後、ソフトバンクや大手損害保険会社...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2026/07/27 08:30 https://markezine.jp/article/detail/77190

Special Contents

PR

Job Board

PR

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング