収益組織への変革を加速させた「Tiger Project」の全貌
庭山:「これまでの軌跡」の中でも、改革の大きな象徴となったのが書籍にも登場する「Tiger Project(タイガープロジェクト)」ですね。これはどのような経緯で立ち上がり、具体的にどのような取り組みを行ったのでしょうか?
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大西:Tiger Projectは、2022年までの中期経営計画において「このままでは目標数値に届かない」という危機感からスタートしました。官公庁などの案件は年度始めに予算が決まるため、期中で急に増やすことは困難です。そこで、より伸び代がある製造業や流通業などの民間企業に着目しました。
具体的には、アカウントポートフォリオに基づき、あえて「既に強い信頼関係がある既存のお客様」ではなく、「ポテンシャルは非常に高いものの、まだ十分なお付き合いができていなかった企業」を中心に約70社を厳選しました。そして社内からタフで優秀な人材を選抜し、社長直轄のプロジェクトとして私がリーダーを務めることになったのです。
プロジェクトを動かすにあたっては、ちょうどその時導入が進んでいたグローバル共通のCRMプラットフォーム「OneCRM」をフル活用しました。私は毎週、プロジェクトチームと一緒に日本だけでなく欧米を含むパイプラインをダッシュボードで徹底的に確認していきました。プロセスの進捗が滞っている案件があれば、担当役員に連絡を入れて「こちらの案件のサポートをお願いできますか」と後押しをしていったのです。
毎週データを追い続けていくと、様々な傾向が見えてきます。通常のITプロジェクトであればリードタイムは3ヵ月〜半年ほどかかるはずなのに、「受注2週間前」になって突如登録される案件がある。「これはどうしてだろう」と確認すると、現場のSEが常駐先で長年の関係性から案件を抱え込み、直前まで共有されていなかったといった実態が判明することもありました。
また、営業現場だけでデータを分析・活用しきれない部分を補うため、「DAC(Data Analytics Center)」という専門チームを組織し、データ集約やダッシュボード構築をバックアップさせました。このようにデータの可視化を進めることで、これまで属人化されていたプロセスを一つひとつ紐解き、組織的なアプローチへと変えていったのです。
庭山:ポートフォリオを見直して顧客を厳選した際、「長年その顧客を担当してきたベテラン営業」からは反対意見も出たのではないでしょうか。そうした現場の抵抗や属人化していた縄張り意識を、どのように乗り越えて改革を進めたのですか?
大西:一つは、営業の役割定義そのものを刷新し、個人の縄張りを成り立たなくしたことです。 一般的に日本のIT企業では、顧客対応において「営業は営業」「SEはSE」と組織が縦割りになりがちで、当時の富士通もまさにその状態でした。しかし、お客様から見ればどちらでもよく、重要なのは「誰が最終責任者なのか」ということです。
そこで私たちはその縦割りをなくし、戦略的重点アカウントに対しては「AGM(Account General Manager)」や「GAD(Global Account Director)」という最終責任者を新たに配置したのです。最初は10名ほどからスタートし、選抜・教育を経て現在は60名規模まで拡大しています。権限と責任を集約することで、従来の人間関係だけで守られていた構造を整理し、属人的な縄張り意識を仕組みで解体していきました。
それから大きかったのは、私や時田(隆仁社長)が自ら現場に入り込み、改革を泥臭く進めたことです。トップ自らが顧客へ足を運び提案する姿勢なども見せることで、「従来のやり方」に固執する現場の意識も徐々になくなっていったと感じています。

大西:そして、これらを全社で実践・体感する強烈なきっかけとなったのが「Tiger Project」でした。顧客の厳選、データドリブンな管理、そしてトップの突破力。これらを掛け合わせた実践事例を社内に示せたからこそ、その後のAGM体制の拡大や組織改革が一気に進み出したと感じています。
