手前のリード数は追わない。営業とマーケが同じ「LTV」に向き合う組織の作り方
飯髙:私がマーケ責任者だったら、まず管理側の話として追うべき指標(KPI)を「受注からの継続率(LTV)」にします。手前のリード数みたいなものは追わない指標にして、チーム全員を「顧客」に向き合わせます。自分たちのプロダクトを本当に欲しい人がどういう人なのか、顧客解像度を爆上げして、営業とマーケが同じ指標を追う枠組みを作りますね。
向井:私が営業責任者なら、まずこういうマーケ責任者と組みます(笑)。飯髙さんみたいに「売上やLTV」まで考えるマーケ責任者って、世の中にほとんどいないんですよ。さきほど申し上げた通り、「マーケティング=トスアップまで」みたいに職義を狭めてしまっている人が非常に多い。
でも、彼みたいな考え方を持っている人となら、営業責任者としてはもう「ツーカー」でいけるので、とにかくたくさん会話をし続けるだけで意思決定がどんどん進みます。

向井:ただ、もし相手がバリューチェーンの川上しか見ないようなマーケ責任者だとしたら、こっち(営業側)にぐいぐい引っ張り込むしかないですよね。さらには、私から経営に対して「マーケ責任者にも営業側の成果まで責任を持たせる代わりに、達成したら適切に評価してくれ」と評価制度自体を変えに行きます。そうやって「商売全体を動かして成果を出す」という共通のゴールに巻き込んでいくのが解決策ですね。
せっかくなので能村さんにも聞いてみたいんですけど、セレブリックスさんでは実態としてどうやって営業とマーケを連携されているんですか?
能村:弊社の場合は、CMOが今でも現場に出続けていることが非常に大きいです。現場の声を直接拾いながら戦略や施策をチューニングできるので、マーケと営業を一気通貫で回すことができています。
それから、マーケチームとセールスチームが合同で「突然返事が返ってこなくなったお客様に、どうやったらお返事を返していただけるか」を一緒に考えるワークショップなどを定期的に行っています。こうやって現場の顧客理解を深める取り組みを続けていることが、分断を起こさない大きな理由になっていると感じます。

原体験と「分業の失敗」──2人が辿り着いた「顧客解像度」の上げ方
能村:一般的な現場のプレイヤーやマネージャーが、お二人のように職種の壁を越えて商売全体をメタ認知するような「高い視座」を持つためには、どうすればいいのでしょうか。そもそもお二人は、いつからそうした考え方を持てるようになったのか、きっかけや原体験をお聞かせいただけますか?
向井:私は幸いなことに、25年前に社会人になった時の環境が分業体制ではなかったんです。プロモーションをしてくれるマーケターなんて社内にいなかったので、集客から価値提供、成果を出すまでの「バリューチェーン全体」を一気通貫でやるしかなかった。これが私のキャリアの原体験としてずっと残っています。
ただ、その後外資系企業に入ると、ジョブディスクリプションに基づいた欧米風の分業モデルが降ってくるわけです。その時に私がメンバーに常に言っていたのが、「自分の職務の前後左右へ『越境』しろ」ということでした。インサイドセールスなら「2割のリードはマーケに頼らず自分で取ってこよう」、フィールドセールスにも「運用に乗せるプロセスまで責任を持とう」と。
現場で自分の持ち場だけに閉じこもるのではなく、前後の職務領域へ“染み出し”、バリューチェーンを体感していくこと。これが視座を上げる一番の現実的なステップだと思います。
飯髙:私の場合は、一度「分業化の失敗」を経験したのが大きなきっかけですね。ベーシック勤務時代、「The Model」型の分業体制を導入したんですが、全然うまくいかなかったんです。
「なんでうまくいかないんだろう」と考えた時に、マーケティングの責任者である私自身が、まったく顧客を見ていなかったことに気づいたんですよ。分業された数字だけを追って、現場の顧客から離れてしまっていた。
だからその後にCMOを務めたホットリンクなどでは、自分が初回面談に出て顧客の声をダイレクトに聞きに行きましたし、マーケターを商談や定例ミーティングにどんどん同席させて顧客理解の解像度を引き上げに行きました。最初からうまくいったわけではなく、一回失敗を経験したからこそ、現場と顧客に向き合う重要性に立ち返れたんだと思います。
