「サントリー天然水」らしさを伝えるオリジナル作品
──ここからは、両社でどのように共創を進めてきたのかをうかがいます。プロジェクト開始からデザイン完成までの流れを教えてください。
大門:2025年の2月頃にサントリーさんよりお話をいただき、4月にキックオフをして2026年7月14日に商品ローンチに至りました。約1年半の時間を掛けた取り組みです。
既存のアートアーカイブからの作品起用ではなく、「サントリー天然水らしさ」や「選ぶ楽しさ」を創出するために、いちからアート作品を制作してほしいとご相談をいただきました。誰にどのようなプロセスで制作をお願いするかの検討が一番時間をかけた部分です。言語的なコミュニケーションが難しい作家も多い中で、どうブランドを感じ取っていただくかが重要でした。
──具体的にどのように実現させたのでしょうか
大門:作家やご家族と一緒に、「サントリー天然水」の北アルプス信濃の森工場に行くところから始めました。そこで得たインスピレーションをもとに創作に入っていただいたのです。

実際に「サントリー天然水」を担当した小林覚さんは現地で口にした「20年」や「ふかふかの土」といった言葉から作品を作り上げました。「サントリー天然水スパークリング」を担当した水上詩楽さんも普段と違う画材での創作という新しい体験をご一緒できました。サントリーさんから「サントリーが描かせた作品にはしたくない」と言っていただけたのがすごく嬉しく、印象に残っています。
金田:私たちも、るんびにい美術館(岩手県花巻市)や、やまなみ工房(滋賀県)に訪問し、作家さんや施設の方々と交流させていただきました。お互いの理解が深まった上でプロジェクトを進められたことが本当に良かったです。
──なぜ、オリジナル作品の起用を考えたのですか?
金田:既存の作品も素敵ですし、時間的にも短縮できたかも知れません。しかし、私たちの考えやブランドに触れた上で作っていただいた作品でしか伝えられないストーリーがあると考えました。
作家性と美味しさ・選ぶ楽しさの表現を成立させるには?
──デザイン完成までに、特にこだわったポイントや、議論を重ねた部分はどこですか?
大門:一つは、作品における色のバランスです。作家にはよく使う色や、こういう時はこの色を使うというパターンが存在します。作家性を尊重しつつ、「選ぶ楽しさ」を作り出すための試行錯誤をしました。また、「サントリー天然水 スパークリング」には「プレーン」と「レモン」の2つの味があります。味感や爽快感がパッと見て伝わるようにしました。
ヘラルボニーと契約している作家の皆さんは、自分が絵を描くことで周囲の人が喜んでくれるという点をモチベーションにされている方も多いです。今回も、「〇〇さんが喜んでくれていたよ」「こうだと嬉しいと言っていたよ」と伝えながら調整を重ねました。
──サントリーとヘラルボニー、施設の方が綿密にコミュニケーションを取り、作家も相手が想像できるかたちで調整したのですね。
金田:そのとおりです。アートが素敵であると同時に、飲み物として「美味しそうに見える」ことが非常に大事です。炭酸の強刺激やレモン感がアートからも伝わってくるように細かいやり取りを、ヘラルボニーさんを通じて実現できました。ブランドとお客様の一番の接点はやはりラベルです。パッと見て「いつもと違うな」「バリエーションがあるんだな」と直感的に伝わる色味の調整にもこだわりました。
大門:商品の購入者にコラボレーションをどう体験してもらうかも議論を重ねた部分です。まずは純粋にパッケージを素敵だと思って手に取り、その後で作家は障害のある人だと知って「すごい」と感じてほしいと考えました。面積の限られたラベルの中で、作家のエピソードや企業の存在をどう伝えるべきか話し合いました。
金田:商品単体で終わらせるのではなく「ヘラルボニーの企業理念や今回のコラボ意図」を深く知ってもらうため、ラベルの言葉選びから、QRコードを通じたWebのLPへの誘導、店頭のPOPに至るまで、お客様の目線やパーセプション(認識)がどう動いていくかという動線設計を綿密に行いました。
大門:「未来への、想像力がわいてくる。」というメインコピーも、50個以上の案の中から、本当に伝えたいメッセージは何かを何度も議論して着地しました。

