顧客の「生の声」を、決裁者が納得する形で見せる
4つの要素のうち、特に強い説得力を持つのが2つ目に挙げた「顧客の声」です。ただし、せっかく良いインタビューができても、見せ方次第で「それは起案者の主観では?」といった疑念を招いてしまいます。
ここで、決裁者に納得してもらうための見せ方について、4つのポイントを確認しましょう(図表4)。
ポイント1:生の声をそのまま引用
資料には誰の発言かを吹き出し形式で具体的に明示します。「お客様の声」といった抽象的で無機質な要約よりも、「〇〇社の△△様はこう言っていた」という固有名詞が入った一次情報の方が圧倒的に説得力を持つからです。実名が難しい場合でも、「情報システム部長(従業員300名規模・ITサービス業)」のように属性を示すだけでリアリティが増します。
ポイント2:録画やキャプチャの提示
顧客へのインタビュー時の発言動画や製品利用時の撮影画像は、多忙な決裁者に対して文字以上のインパクトを与えます。たとえば、顧客の発言動画を30秒程度に編集して再生することで、顧客の「温度感」を伝えることができます。特に、困っている表情や身振りは「本当にニーズがあるのか?」という疑念への直接的な回答になるでしょう。顧客にインタビューを依頼する段階で、撮影と動画・画像データの使用の許可取りを忘れずに。
ポイント3:具体的なエピソードや数字を提示
「今の業務で毎週3時間の無駄がある」といった定量的な表現を引き出せるよう、インタビュー時に意識します。「不便に感じている」という抽象的な発言より、具体的な数字をともなうエピソードのほうが、決裁者は容易に状況をイメージできます。インタビュー中に「それは具体的にどのくらいの頻度・時間ですか?」と一歩踏み込んで深掘りする習慣をつけておくと、資料に落とし込みやすい発言が自然と増えます。
ポイント4:複数人の共通点を強調
一人の意見は「たまたま」と受け止められがちですが、複数人が同じ課題を口にすれば「市場の共通事実」として扱うことができます。たとえば「5人のうち3人が同じ課題を指摘」とまとめることで、一気に客観性を帯びます。この「共通項の可視化」こそが、定性情報を決裁者向けの説得材料へと変換する最大のポイントです。
こちらも「第三者の意見」収集と同様に、自社のネットワークだけでは意見の偏りが出やすいため、外部サービスの活用をおすすめします。予算やスケジュールの問題がある場合はセルフ型のサービスを活用するのも良いでしょう(たとえばマクロミルの場合、セルフ型のインタビュー「Interview Zero」というサービスがあります)。
「それは一人の意見では?」に応えるアンケートの使い方
顧客の声はインパクトが強い一方で、「一人の意見では?」という疑念を招きやすいのも事実です。この疑念を払拭するのが、主張を定量的にサポートするアンケートの役割です。アンケートの具体的な活用方法を4つご紹介します(図表5)。
活用方法1:ニーズの広がりを明示
特定の課題を感じている割合や、注力・投資領域を数値で示します。個別インタビューで得た「深刻な課題」に対し、「同様の課題を抱える企業が〇%」というデータを添えることで、それが市場に一定数存在する普遍的な悩みであることを裏付けられます。
活用方法2:受容性の確認
サービスの利用意向率や他社サービスの導入率を測定します。「課題意識があること」と「お金を払う意思」の間には、意外と距離があります。利用意向率を測ることで、課題意識の段階なのか、積極的に解決策を探している段階なのかを判別でき、事業やプロジェクト推進の妥当性を示すことができます。
活用方法3:価格・条件の妥当性
いくらなら購入するかという受容価格の分布や、該当部門の予算規模を把握します。「その価格で本当に売れるのか」という決裁者の疑念には、想定価格での購入意向の分布を示すことで定量的に答えられます。また、「そもそも稟議が通る金額感なのか」という論点には、該当部門の予算規模の把握で先回りして備えられます。
活用方法4:顧客自体のプロファイルの明示
良いデータを揃えても、「誰に聞いたデータなのか」が曖昧なままだと信頼性を失います。必ず、「IT企業の意思決定者100人」のように、決裁者が信頼できる形で回答者のプロファイル(役職・企業規模・決裁権等の属性)を明確に示し、調査結果自体の説得力を底上げしましょう。
こうした調査は、職業・業種・役職といったビジネス情報を持つBtoBパネル(BtoB向けの専用パネル)を使うことをおすすめします。対象となる必要な人だけに調査を実施できるため、コストを抑えることができます。定性インタビューで見えたニーズの「深さ」を、定量アンケートで「広がり」として裏付ける。この両輪が揃って初めて、決裁者は安心して意思決定できるのです。
