機械学習を「信じて任せる」ために、理解しておくべきこと
高橋:CPMを高めるためには、CVRとCTRを高める必要があることがわかりました。具体的に、何をすればいいのでしょうか。
石渡:これも分解して考えてみましょう。CVRやCTRは主に以下6つの要素を動かすことによって変動します。
- ターゲット
- 訴求内容
- 配信する曜日・時間
- 配信するデバイス
- 配信する媒体や枠
- クリエイティブ
このうち、クリエイティブにはまだまだ人間の手を加えるべきだと考えています。一方で1~5については、メディア側が人間には把握できないほど多くのパラメータをもとに最適化しています。基本的に「機械学習を信じて任せる」のが望ましいでしょう。

高橋:そうなると、機械学習のパフォーマンスを高めることが大切ですね。マーケターに求められることは何でしょう?
石渡:計測ツールで何を計測し、媒体へ何を連携できているのか、正しく理解することが必要です。特にアプリマーケティングでは、AdjustのようなMMP(モバイル計測パートナー)の知識は必須。「なんとなく理解している」程度では、機械学習の成果を最大化することはできません。
高橋:確定的アトリビューションやWeb to appなどアプリ計測やデータの媒体連携に関する主な仕組み・用語がたくさんありますよね。ここに来場されているアプリマーケターの方々であっても、「すべて自分の言葉で説明できる」という方はほぼいないのではないでしょうか。仕組みを十分に理解しないまま、ブラックボックス化してしまっている機械学習を見直す余地は十分にありそうですね。
石渡:そうですね。ルールを理解しなければ、自分たちの想定しているコンバージョンの定義に当てはまっているのか、正しい方向で最適化をかけられているのかもわかりませんから。
高橋:新人マーケターは用語が多すぎてわからないと思うかもしれません。不明な場合はAIと壁打ちしながら理解を深めるのも有効だと思います。
石渡:「何を成果としているのか」を言語化した上で、次に重要なのが「事業KGIと接続する」ことです。たとえば、売上という最終KGIにつながるまで1年を要する場合、その頃には媒体の広告枠も、ユーザー層も、クリエイティブも変わっているかもしれません。そのデータで機械学習させたところで、1年前とは前提が大きく異なるため、あまり意味をなさないでしょう。「どのコンバージョンで最適化をかけるのがベストなのか」は、「データの量」「KGIとの因果関係の強さ」「データ取得までの期間」を加味して人間が考え、科学していくべき領域です。
AI時代のクリエイティブは「自社にしかない体験とデータ」で差別化
高橋:続いてクリエイティブについてお聞かせください。昨今は各媒体がAIクリエイティブの生成機能をリリースし、「AIによる量産」がメジャーになりつつあります。しかし、石渡さんは「クリエイティブは人間が関わるべき領域」と考えられているのですね。
石渡:はい。そのまま広告に使えるクオリティのAIクリエイティブは増えましたし、否定しません。しかし、「とりあえずAIで量産すればいい」という風潮には疑問を呈したいです。
高橋:それはなぜでしょうか?
石渡:独自モデルを構築している一部の企業を除き、「AIは自分たちだけのものではない」からです。同じ生成AIに同じような指示をすれば、アウトプットも同じようなものになるのは当然。陳腐化が進み、広告は「どこかで見たクリエイティブ」であふれるようになってしまうでしょう。
高橋:AIを活用しつつも、他社と差別化するためにはどうすればいいのでしょうか。
石渡:インプットの質を高めれば、アウトプットの質も高まります。具体的には、自社にしかない体験やデータと、AIを組み合わせることが重要です。一例として、当社サービス「メルカリ」の動画広告『やさしいメル﨑』の例を紹介します。
メルカリは個人の出品者と購入者が直接取引するCtoCプラットフォーム。取引後には双方がレビューするため、累計で数十億件のレビューデータが蓄積されています。『やさしいメル﨑』では、その膨大なレビューデータからお客さま同士が互いを気遣う体験をAIで抽出の上、どう落とし込むか壁打ちしていきました。キャラクターや動画の制作にもAIを活用しています。人間が数十億のレビューを読むのは不可能なので、AIとの共同作業だからこそできた取り組みと言えますね。
高橋:CVRとCTRを高めていくために、自社レビューを深掘り、ベネフィットを突き詰めていくというのは非常に本質的ですね。一方、ダイレクト広告のバナーなど、これほどのパワーをかけられないものについてはどうすればいいでしょうか。
石渡:量産が必要なクリエイティブについても、考え方は同様です。当社では画像生成や動画生成、SNSのトレンド分析などを担うAIエージェントに、自社の購買データや検索データを分析するエージェントも組み合わせ、全体をオーケストレーションしていく構想を進めています。量産クリエイティブにおいても、自社の独自情報を組み込んでいくことは差別化のカギとなるでしょう。
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