顧客の課題の源泉を紐解くフレームワーク
複雑なコンテキストを解き明かし、組織的に再現可能な形にするため、SALESCOREでは営業活動を次の3つの層で整理することを提唱している。
1. 行動の層(業務プロセス)
テレアポ、初回商談、仮説立案など具体的な営業行動の層。
2. 価値合意の層(購買意思決定ロジック)
なぜその行動が価値として成立するのか。顧客の課題とソリューションが合意された因果関係の層。
3. 文脈の層(情報と解釈)
価値合意の背景にある情報と咀嚼の連鎖。課題が発生した源泉の層。
特に重要なのが「2.価値合意の層」と「3.文脈の層」の構造化だ。中村氏は「課題とは宙に浮いて存在するものではなく、必ず顧客の業務プロセスに紐づいて発生する」と説明。顧客の課題の源泉を紐解くためには、次の「課題の5層因果連鎖」を押さえる必要があるという。
たとえば、あるアパレルEC企業に対して物流サービスを提案する場合を考えてみよう。単に「物流コストを削減しませんか」とアプローチしても響かない。「EC市場の成長(外部環境)」により「自社ECの売上比率が高まる(事業モデル)」中で「出荷量の急増にともなって関西の配送センターの派遣社員比率が上昇し、繁忙期の出荷ミスが発生している(業務プロセスと課題)」という因果関係を捉えて初めて、真に刺さる提案シナリオが描ける。
再現性を高めたければAIに解釈の余地を与えるな
ハイパフォーマーは過去の失敗や成功体験を通じて、この因果連鎖を感覚的に脳内で処理している。しかし、新入社員や経験の浅い営業担当者にこれを言葉だけで伝え、数ヵ月で習得させるのは現実的ではない。だからこそ「AIを活用した構造化が必要になる」と中村氏は強調する。
昨今、生成AIを営業活動に導入する動きが急速に広がっている。しかし「ChatGPTやClaudeなどのAIツールを全社員に付与したが、成果につながらない」「商談の文字起こしデータをAIに投入して分析させても、出力内容が浅く安定しない」という悩みを抱える企業も多い。これに対し中村氏は、AI活用における致命的な誤解を指摘する。
「商談データをそのままAIに投げて『解析して仮説を出してくれ』と頼むのは、AIに解釈の丸投げをしている状態です。AIを活用して再現性を出すためにまず行うべきは、AIを使うことではなく、成果が生まれる構造を人間側が明確に定義し、AIに解釈の余地を与えないことです」(中村氏)

