「シェアリング=環境配慮」は勘違い?日米比較で見えた消費者の本音
「シェアリングサービスは、環境配慮意識の高い消費者に好まれる」──こうした前提で事業やコミュニケーションを設計していないでしょうか。筑波大学の西尾チヅル教授と東洋大学の石田実准教授の『サステナビリティ価値観とエコロジー行動―日米消費者の比較分析―』は、日米の消費者を対象に、サステナビリティに関する価値観が、エコプロダクトの選択、リユース、シェアリングなどの行動とどのように結びついているのかを明らかにしています。
興味深いのは、シェアリング行動を後押ししている価値観です。分析の結果、日米いずれも、シェアリングは環境を大切にしたいという「エコロジー価値観」よりも、モノの所有や消費を重視する「マテリアリズム」に強く動機づけられていることがわかりました。一見環境に配慮した同じ行動でも、その背後にある消費者の価値観や動機は、企業の想定とは異なる可能性があります。
「環境に良い行動だから、環境意識に訴えればよい」と考えることは、サステナブルな消費を広げる上での1つのピットフォールなのかもしれません。本研究は、消費者がなぜその行動を選ぶのか、その背後にある多様な価値観に目を向けることの有益性を教えてくれます。

「環境に良い商品をもっと売る」で十分?成長前提のマーケティングを問い直す
環境負荷の低い商品を開発して、その販売を拡大する──サステナビリティに取り組む企業にとって、これは一見望ましい方向に思えます。しかし、環境効率の良い製品を普及させても、社会全体の生産や消費量が増え続ければ、環境負荷を減らせたとはいえないかもしれません。
青山学院大学の芳賀康浩教授による『充足性アプローチに適合したマーケティングへの転換の課題と可能性―Bコープ・ムーブメントと非営利組織のマーケティングの示唆―』は、エネルギーや資源の総消費量そのものを抑える「充足性」という視点から、従来のマーケティングの前提を問い直します。
本論文では、公的な課題に取り組む企業「Bコープ(B Corporation)」の取り組みを考察し、「利益のためのCSR」か「CSRのための利益」かという二者択一の問題を指摘。さらに、売上以外から活動資源を獲得する非営利組織の仕組みを手がかりに、企業の収益のあり方を再考できる可能性を示しています。
本論文の刺激的な点は、単なるCSRや環境貢献の文脈を超えて、マーケティング根本のOS(前提思想)そのものに書き換えを迫っている点にあります。サステナビリティを追求するなら、「環境に良い商品をどう売るか」だけでなく、「より多く売ることを前提としないなら、どう稼ぐのか」という問いにも向き合う必要があります。
本論文は、「より多く売り、成長し続けること」を成功軸とするマーケティング観から一歩引き、社会に生み出した価値を持続可能な事業の収益にどう結びつけるかを考える、新たな視点を提供してくれます。
