広告運用のPDCAサイクルをほぼ自動化
大杉:続いて、少数精鋭で自動化を推進されているカナリーの飯山さん、現場でのAI活用について教えていただけますか。

飯山(カナリー):当社では、分析用データベースであるBigQueryに、アプリの操作ログや広告データなどをすべて集約しています。このデータ基盤とAIをAPIで接続することにより、データ収集・集計・施策設定の自動化を実現しています。
たとえば、AIツールのDevin(デビン)にSQLを爆速で記述させたり、Pythonを用いた機械学習で予測を出したりしています。特に効果を実感しているのが「日次の広告予算配分」の自動化です。不動産業界には「月の前半に物件情報が増える」という季節性があり、日ごとにCVRが変わります。そのため、AIが過去のデータをもとに「どの媒体にいくら配分すればコンバージョンが最大化するか」を日次ベースで計算しています。
さらにAIは「前回の変更によって効果がどう変化したか」を自主的に検証し「より成果を出すための新しいロジック」を提案してくれます。提案内容はSlackに通知され、私がスレッドで承認ボタンを押すと、API経由で広告プラットフォームのTCPA(目標獲得単価)や予算設定が書き換わります。ほぼ自動でPDCAサイクルが回る仕組みです。
また、クリエイティブ分析にもAIを活用しています。Geminiを用いて動画広告のテロップやセリフ、展開などの構成要素をすべてテキストデータ化し、成果の出る動画の傾向をパターン化しています。そのナレッジをデザイナー自らがプロンプトに反映して分析できる環境を作ったため、企画・制作が現場で自走するようになりました。
AIの導入によって作業自体は格段に効率化されましたが、次々と新しいアイデアを試せるようになった分、仕事の幅と量はむしろ増えたと感じています。
IPの世界観は人が守り、クリエイティブのミスはAIで防ぐ
大杉:2つ目のテーマは「自動化の課題と限界」です。何でもAIに任せられるわけではない中で、人が介入すべき領域についてお話しいただけますか。
高橋(BNNS):当社においてAIの活用を最も慎重に検討しているのが「クリエイティブの制作領域」です。バンダイナムコグループはIPをお預かりし、ファンや権利元の皆さまとの信頼関係の上にビジネスを展開しています。作品の世界観やブランドの倫理観を守るための判断には、非常に繊細なアプローチが求められるため、現状はAI任せにせず必ず「人の手と目」を介入させています。
一方で「ミスを防ぐためのチェック工程」にはAIを積極的に導入しています。グループ会社のバンダイナムコネクサスと連携し、AIによる「クリエイティブチェックツール」を運用中です。
たとえば2種のバナー画像を比較して「修正前の古い素材に戻っていないか」「権利表記のスペルミスはないか」「キャラクターの色味が誤って改変されていないか」などを自動で検知します。制作のやり取りが増えると、どうしても人為的ミスが発生しやすくなりますが、AIをチェック役に据えることで、重大な掲載事故を減らすことが可能になりました。
大杉:ブランドの価値を守る判断は人、ミスをなくす確認作業はAIと、見事な役割分担ですね。
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