アプリ内課金の収益規模で世界3位の日本
イベントの後半では、Adjustの山根氏とSensor Towerの植田氏によるトークセッションが行われた。このセッションは、両社が共同で実施した調査結果をまとめたレポート「モバイルアプリトレンド2026:日本版」の内容を基に、アプリ市場の構造変化や最新トレンドを紐解くものだ。
【右】Adjust Senior Enterprise Customers Success Manager 山根竜二氏
まず提示されたのは、グローバル市場と日本市場の構造的な違いである。アプリのダウンロード数や総利用時間において、日本は世界で15位前後に位置している。しかし、アプリ内課金の収益規模を見ると、日本は長年に亘り世界第3位のポジションを維持している。植田氏は「日本人はアプリ上でコンテンツに対してお金を払う意識が非常に高い国民性を持っている」と分析する。
また、市場全体のカテゴリ別収益シェアにも大きな地殻変動が起きている。これまで市場を牽引してきたのはゲームアプリであったが、2025年上半期を境にゲームと非ゲーム(エンタメ、ツール、生成AIなど)の収益規模が並び、直近では非ゲームアプリの収益成長率がゲームを上回る逆転現象が生じている。
ただし、このデータだけで「ゲーム市場が衰退している」と判断するのは早計だ。植田氏は「現在、多くのゲーム事業者がWeb決済をはじめとする『ストア外課金』への誘導を進めている。ストア内の売上データだけでなく、ストア外の決済動向を含めて市場を理解することが不可欠だ」と補足した。
グローバル市場で爆発的な伸びを見せているカテゴリとして「ユーティリティ(ツール系アプリ)」が挙げられた。ただし、同カテゴリでダウンロード数1位の迷惑電話・詐欺電話ブロックアプリ「Truecaller」は、ユーザーの多くを人口大国のインドが占めている。ストア外課金の動向然り、数億規模のダウンロード数の背景を正しく理解する必要性を植田氏は重ねて説いた。
NetflixとeFootballが示す大型イベントとの連動効果
セッションは、2026年上半期の国内アプリトレンドの深掘りへと進んだ。ヒットタイトルや上位アプリの動きから、日本のユーザーを引きつける成功パターンが読み解かれた。
まず、国内の消費支出ランキングで不動の1位を誇るのが「ピッコマ」をはじめとするマンガアプリだ。世界的に見ても、非ゲームジャンルでマンガアプリが収益の頂点に立つ現象は極めて稀である。日本人の「日常的にマンガやアニメを消費する」という文化的な土壌と、コンテンツに対価を払う意識の高さが、世界に類を見ない高収益ビジネスを支えている。
また、2026年上半期に特に顕著だったのが、大型イベントを活用した「瞬間風速のハック」だ。代表例が、WBCの独占配信権を獲得したNetflixである。従来は既存ユーザーのエンゲージメント維持フェーズにあると見られていた同アプリだが、世界的イベントの独占配信をフックに新規ダウンロード数が急増し、ランキング5位へ急浮上した。さらに、コナミのゲームアプリ「eFootball」も、サッカーワールドカップ開催期間中に収益首位を獲得するなど、イベントとの連動が劇的な成果を生んでいる。「グローバルイベントをグロースのフックにするアプローチは非常に有効」と植田氏はまとめた。
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