テレビCM放映時と同水準の指名検索数をコスト3%で達成
TOKIUMが経理AIエージェントのポジションを確立するために実行したマーケティング戦略は、主に次の4つの段階に分けられる。

第1段階:検索結果をジャックする「受け皿」の構築
リブランディングの初期段階では、まず「経理AIエージェント」と検索された際に、あらゆるチャネルで自社の情報が露出する状態を目指した。
具体的には1年間で合計332本ものコンテンツを量産。プレスリリース115本、SEO記事164本、ウェビナー29本、ホワイトペーパー14本、新規LP10本を展開した。これにより「経理AIエージェント」の検索結果を独占し、ユーザーが調べた際に必ずTOKIUMに行き着く導線を整えた。
第2段階:ビジネス映像メディア「PIVOT」への出演と2次利用
新コンセプトの認知を一気に広めるため、同社は従来のテレビCMではなく、ビジネス層への到達率が高いWeb映像メディア「PIVOT」への出演を選択した。
PIVOTへの出演(全5回)は功を奏し、初回配信当日には同社の指名検索数が過去最高を記録。かつて数億円規模を投じたテレビCM放映時と同水準の指名検索数を、わずか3%程度のコストで獲得することに成功した。
さらに同社が徹底したのは、1本の映像コンテンツをとことん活用し尽くす二次利用の工夫だ。PIVOTの30〜40分におよぶ長尺動画の中から、注目を集めやすいシーンや関心を惹く発言を30秒〜1分程度に抽出。これをタクシー広告、エレベーター広告、Meta広告、YouTube広告、SNSショート動画へと展開したのだ。動画制作の台本作成時から、切り抜き広告でバズを生むためのキーワードや演出をあらかじめ仕込んでおくという設計がなされていた。
「タクシーやエレベーター広告で30秒の短尺動画を見た方が、本編のPIVOT動画を観て当社のサービスを深く理解し、問い合わせに至るケースが多発しました。30分間の動画をじっくりと視聴した上で商談に臨まれるため、初回商談の段階で既に商談を1回終えているような状態が作られており、受注までのスピードが劇的に向上しました」(戸田氏)
第3段階:導入顧客による「実証」と事例の連打
自社による発信だけでなく、大手企業や先進的な取り組みを行う導入顧客をPIVOTの番組へ招聘し、実際の導入効果を顧客の言葉で証明してもらった。あわせて、象徴的な事例を取り上げたプレスリリースを連続して配信し、サービスの信頼性を強固にした。
第4段階:カンファレンスと書籍出版による「権威性」の確立
最終段階として、業界内でのデファクトスタンダードとなるべく、自社主催の大規模オンラインカンファレンスを開催。同社の代表が執筆した書籍も出版するなど「経理AIエージェントの先駆者」としての権威性を確立し、市場におけるポジションを不動のものとした。
複数コンテンツを経由した顧客は商談化率が3倍高い
戸田氏がこの1年の取り組みで手応えを感じたのは、複数チャネルを有機的に連動させたナーチャリング設計だ。現代のBtoB顧客は、単一の広告やウェビナーだけで購買を決断することはない。「PIVOTで認知し、タクシー広告で記憶が強化され、ウェビナーで理解を深め、メルマガやホワイトペーパーで検討が進み、導入事例や展示会で確信する」というように、複数の接点が積み重なった結果として案件化に至る。
同社のデータ分析によると、自社が用意したマーケティングコンテンツを複数経由した顧客は、単一接点の顧客と比較して商談化率が3倍に達しているという。
「単発の施策ごとにCPAやROIを厳密に評価しすぎると、連動効果が見えなくなり、顧客育成に必要な接点を誤って削減してしまうリスクがあります。チャネルごとの順序を画一的に決めつけるのではなく、顧客がどのような経路を辿っても着地できるような『面』での導線設計が極めて重要です」(戸田氏)
