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エージェントコマースがマーケターを変える。Microsoft最新レポートが示すAIに商品を売る時代

CVR2倍以上。AIを「販売員」にする海外事例

 Microsoftが描く未来は、既に一部のECで現実になっている。

 シェイプウェアブランドのSPANXは、商品数の増加によって顧客が選択に迷うという課題を抱えていた。そこでAIコマース企業Enviveと組み、顧客の商品選びを支援する「SPANX AI Stylist」を導入した。

 従来型のFAQチャットではない。顧客が用途や着用シーンについて相談すると、AIが商品を提案する。たとえば「イベントに着ていく服に合う商品」といった、検索キーワードだけでは表現しにくいニーズにも対応する。

 Enviveの公表データでは、AI Stylist導入後、コンバージョン率が100%以上向上し、年間換算の増収効果は380万ドル、投資額に対するリターンは38倍だったとしている。ベンダー自身による公表値である点には留意が必要だが、AIが単なる問い合わせ対応ではなく「販売員」になりつつあることを示す事例である。

 さらに興味深いのは、AIとの会話自体がマーケティングデータになる点だ。顧客が「結婚式で着るならどれがいいか」「長時間着ても快適か」と尋ねれば、それは検索キーワードより具体的な購買ニーズである。

 実際、EnviveはSPANXについて、AI販売員から得た顧客の質問をコンテンツ戦略にも活用している。「ジャンプスーツに合うシェイプウェアは何か」「ウェディングドレスの下に必要か」といった具体的な疑問に答えるコンテンツを制作。その結果として、オーガニックトラフィックが23%増加し、検索順位が付いたキーワード数が113%増加したとしている。

 つまり、「AIに接客させる→会話から顧客ニーズを知る→コンテンツや商品情報を改善する」という新しいマーケティングループが生まれている。

 同様の動きは他社にも広がる。THG IngenuityはGoogle Cloudと開発したAI Shopping AssistantをMyproteinなどに導入し、2026年6月の発表では、AIショッピングアシスタントを利用したセッションでコンバージョン率が最大8倍になったとしている。

ECサイトに来ない顧客を、どう売上につなげるか

 さらに大きな変化が、「どこで購入するのか」である。

 Microsoftは「Copilot Checkout」を展開している。ユーザーはCopilotとの会話から離れることなく商品を購入でき、販売事業者は既存の決済や物流システムを利用しながら、顧客との関係やデータを保持する仕組みだ。現時点では米国、英語、米ドルに限定されているものの、Shopify、Stripe、PayPalとの接続も用意されている。

 この変化はMicrosoftだけではない。Etsyは2025年にChatGPTのInstant Checkoutに参加し、2026年5月にはさらに「Etsy app in ChatGPT」を公開した。

 たとえばユーザーが「ガーデニングが好きな母親に100ドル以下の母の日ギフトを探して」と話しかけると、AIがEtsyの商品群から候補を提示し、比較できる。EtsyのChief Product and Technology Officer、Rafe Colburn氏は、従来の商品検索がキーワードとの一致を重視していたのに対し、ECの課題は「キーワードの一致から、文脈の理解へ」移りつつあるとの考えを示している。

 一方で、AIの中で購入まで完結させれば必ず成功するわけではない。

 WIREDの報道によれば、WalmartがChatGPTで試した初期のInstant Checkoutでは、ChatGPT内で直接購入できる商品のコンバージョン率は、Walmartサイトへ遷移する商品より約3分の1にとどまった。商品を1つずつ決済する体験などが課題になったという。

 Walmartはその後、自社のAIアシスタント「Sparky」をChatGPTやGeminiの中へ展開する方向へ転換した。同社によれば、Sparky利用者の平均注文額は35%高いという。

 これはマーケターに新たな問いを突きつける。「AIにどこまで購買体験を任せ、どこから自社のブランド体験へ戻すのか」まで設計する必要が出てくるのである。

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「検索順位」だけでなく「AIに推薦されたか」を測る

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この記事の著者

岡 徳之(オカ ノリユキ)

編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。

●ウェブサイト「Livit」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2026/09/10 07:00 https://markezine.jp/article/detail/77500

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