データ活用人材を育てる、3つのステップ
次に、竹山氏からデータ活用人材育成の具体的なプロセスが解説された。未経験者が自立してデータを扱えるようになるまで、同社では明確に定義された3つの実施ステップをループさせている。
まず第1のステップが「テーブルの理解」である。CDPに統合された購買データや顧客データは、一見すると整理されているように見えても、非ログイン状態のユーザーの会員IDの挙動など、実務特有の落とし穴やルールが多数存在する。「何の前提知識もないままデータに対峙すると、その複雑さに面食らってしまう」と竹山氏。そのため、AIエージェントを介して「このテーブルにはどのような形式で、どんな意味を持つカラムが入っているのか」といった仕組みを視覚的かつ論理的に学習していくプロセスを最優先した。
第2のステップは「分析実行」のフェーズだ。ここでは単にAIにクエリを書いてもらうだけではなく、SQLの構造や分析ロジックそのものを体系的に学ぶ。分析を実行する際、AIエージェントは生成したクエリに対して解説や注釈を付けてアウトプットする。受講者はその構造を読み解くことで、自力でロジックを組み立てる力を養っていく。
第3のステップは「エラー対応と改善」。エラーが発生した場合、その内容をAIエージェントに入力することで原因と解決策を学ぶ。繰り返し何回も入力を続けることで成功に近づき、エラー内容を解消できたという成功体験を積み上げる一連をプロセスとして組み込んでいるのだ。
このテーブル理解・分析実行・エラー改善という3つのステップを繰り返すフローが、未経験者を一人前のデータ活用人材へ育成する仕組みとして機能している。
未経験者がわずか2ヵ月でダッシュボードを自作
続いて、このAIエージェントを活用した育成プログラムの成果事例を竹山氏は紹介。一つ目は、SQLの知識が一切なかったECの営業担当者が、一から店舗とECの購入・在庫状況を可視化するダッシュボードを自作したケースである。
ECとリアル店舗の両チャネルを持つTSIだが、商品の在庫はどうしても売上で大きな割合を占める店舗側に偏っている構造があった。ECの営業としては「店舗には在庫があるのに、自社ECでは欠品が続いており、重大な機会損失が発生している」という危機感があったものの、それを裏付けるデータを自力で抽出する術がなかった。
そこで担当者は、AIエージェントとの学習プロセスを通してデータ構造を学び、わずか2ヵ月ほどの期間で両チャネルの購入数と在庫数をリアルタイムで突き合わせるダッシュボードを完成させた。これにより、店舗在庫は十分にあるにもかかわらず、EC側で欠品している商品が特定できるように。事業部をまたいだ在庫移動や調整が可能となった。

また、別事例として挙げられたのは、ECサイトにおける「商品のお気に入り登録数」と「EC在庫数」を掛け合わせたダッシュボードの開発だ。お気に入り登録が多い商品ほど顧客の購買意欲が高いことを意味するため、該当商品の在庫がない状態を防ぐことは売上に直結する最優先事項といえる。こちらも従来は可視化する仕組みが存在しなかったが、AIエージェントの力を借りて短期間で実用的なツールとして営業部に提供を開始した。

さらに、モールサイト全体の戦略立案においても、ブランドごとに顧客数と客単価の相関関係を示すプロット図をAIがわずか1分ほどで自動生成する環境が整った。これにより、「低価格帯のブランドで新規顧客を効率的に獲得し、どのようなシナリオで高価格帯のブランドへ引き上げていくか」といった大所高所からのマーケティング戦略を、データによる示唆のもとで立案できるように。業務の工数削減や意思決定の質向上が達成されている。
加えて、メールマガジン施策におけるHTML作成やSQLの生成でも、AIエージェントが大きく貢献する環境を実現した。これにより、コストの大幅削減などにつながっているという。
「メールの配信目的やターゲット、タイミングなどをAIに入力すると、サイトから要素を拾い、7~8割ほどの完成度で生成してくれます。SQLも同様に、かつては手作業でゼロから行っていたプロンプト作成を、AIエージェントによって今はある程度最初から精度高く行えるようになっています」(竹山氏)
